タイムトラベル
春
船の中
真っ暗なトンネルの中をカプセル型の船が音もなく、スーと通り抜けて行く。まるで宮沢賢治の小説、銀河鉄道の夜に出てくる、電気で動く汽車のように。
「では、ご乗車の皆様、さっき確認いたしました注意事項を今一度良くご確認くださいますようお願いいたします。」
このタイムトラベルのために開発されたガイドロボットがちかちかと点滅する口を動かしながら言った。
「いよいよだ。」
夏子はつばを飲み込んだ。
この船は過去へ行く便だった。大正、明治、江戸時代へ行く人々が乗っている。船の中は外が常に暗いと言うだけで、普通の旅客機の中と変わらなかった。夏子は乗務員ロボットから、朝食を受け取った。タイムトラベルをあまりに繰り返すと人体に影響があると言うので、船で働くのはガイドも運転手も乗務員も全てロボットだった。
夏子は朝食を食べながら、スマホのチケット画面を何度も確認していた。長年の夢だった計画を実行できたことに心踊っていた。
この計画を思いついたのは二十年前、夏子が25歳の秋のことだった。
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