エンジェルデイズ another story
夢水 四季
天使アンズの怠惰な冒険
第1話 出会い
俺の前に舞い降りたのは怠惰な天使だった。
「歩くのも飛ぶのも疲れた。抱っこして」
「仕方ないな……」
俺は、この怠惰な天使を腕に抱えてやった。
この天使の名前はアンズ。
昨日、突然、空から降ってきて、俺の守護天使だとか言い出した。
最初はとても信じられなかったが、白く綺麗な翼と、それを使い飛ぶ姿を見て信じざるを得なくなった。
「守護天使って言ってたけどさ、何するの?」
「特に何もしない、ただ側にいるだけ」
「じゃあ俺が死にそうになったら天使パワーで助けてくれるの?」
「見てるだけ。それが運命」
「それじゃ、守護天使の意味ないじゃん」
「いえいえ、アンズだって助ける時は助けますよ!」
こうフォローを入れたのは喋るプレーリードッグだった。
アンズのパートナーだという彼女の名前は「リー」。
「ね、アンズ?」
「え~、面倒臭い」
「守護対象を死なせてしまった時の事務手続きの方が面倒臭いですよ」
「え~、そんなのあるの~。それも面倒臭い」
アンズは面倒臭いを連呼しているが、俺には夢があったので、それを口に出す。
「俺、冒険者になりたいんだけど」
「え~、冒険者なんてハイリスクハイリターンの職業やめてよ~」
「冒険者は俺の夢なんだよ!」
「残念だけど諦めて」
「何だよ! 天使なら俺の夢を応援してくれたっていいだろ! 天使がパーティに入って、これで勝てるって思ったら、これだよ」
「アンズ、彼の要望を聞くのも大事ですよ。他の守護天使も冒険者をよく支えています」
「よそはよそ、うちはうち。冒険者になんてさせない」
「いや、俺は冒険者になる!」
「何でそんなに冒険者にこだわるの?」
「俺の村が昔ドラゴンに襲われた時に、助けてくれた冒険者がカッコ良かったから。その人に憧れて俺は冒険者を目指すようになったんだ」
「ふうん。憧れねえ……」
「俺はお前に反対されても冒険者になるぜ。お前の制止なんて振り切ってやる」
「え~、止めてよ~」
俺はアンズを引きずって冒険者ギルドに向かった。
受付の人に冒険者証を発行してもらえれば、俺は晴れて冒険者になれる。
「すみません! 冒険者になりたいんですがっ!」
「私は嫌です~」
冒険者ギルドの面々も、天使を引きずりながら現れた俺に若干引いている。
「お、お連れ様は嫌だと言っていますが……」
「あ、こいつの言うことは無視していいんで」
「で、では冒険者証を発行いたしますね」
「お願いします!」
「や~だ~」
こうして俺と怠惰な天使との冒険?が始まったのだった。
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