知り合いの話
鴇羽
見知らぬ妙な家族
職場の先輩の順子さんから聞いた話。
順子さんは1Kの単身者用のマンションに住んでいる。
ベッドが置いてある部屋はまあまあの広さで、ベランダ付きの普通の部屋なのだが、
休日に何となく昼寝をしていて、ふと目を覚ますと、
自室から扉がなくなって、扉がある側が全面ベランダになっていた。
部屋が両面ベランダに囲まれていたそうだ。
そして、全く見覚えのない6人家族が窓際の炬燵で談笑していた。
順子さんは不審者が部屋に入ってきたのか、自分が何か知らないうちに無意識に他人の部屋に入ってしまっていたのか、わからなかったがとりあえず、
「ここ私の部屋ですよね?」と声を掛けようとして近づいたのだそう。
すると、6人家族が一斉に順子さんの方を向いて、
「あー駄目ですよね、すみませんねえ」
と父親らしい人が謝りだして、順子さんが声を掛ける間もなく急に家族が続々とベランダから飛び降りていった。
「飛び降りる瞬間まではなんか和やかに談笑してたんだけど、ドサって音が次々にしてきたんだよね」
流石に直後の下の様子は怖くて見ることができなかったが、元扉側のベランダが廊下に繋がっていたため、少ししてそこから階段を下りた。
おそるおそるベランダの下の地面を見に行くと、死体はなかったが、6人分の血溜まりができていた。
「寝ぼけてた時の夢だとは思うんだけどね」
ただの夢というには妙に生々しく、細部まで覚えていて、ショッキングな出来事だったらしい。
昼間にベランダに出るのが少し苦手になったそうだ。
知り合いの話 鴇羽 @tokiha0610
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます