第3話 雪解け

今から話すのは、私がSと初めて同じクラスになった高1になってからのこと。

卒業後、就職せず大学進学を目指す高校生なら受験に向けエンジンをかけ始める時期だ。

例に漏れず私も、目標の大学のために必死だった。高校にあがると同時に委員会も部活も辞め、学校が終われば塾に直行していた。

私文志望のSは勉強に極振りの私とは対照的に、委員会や習い事にも積極的だった。


そう、接点なんてまるでなかったのだ。

中高一貫校では高1にもなれば人間関係は大体固まってるし、今更新しく人脈を広げようとする子なんてほとんどいない。

あるとしたら揉め事で馴染みのグループを追放された子くらいだ。


なのにSは高1の梅雨の時期から私にしつこく絡むようになった。

私や周囲の人間も考えていた通り、S自身もはじめはほんの戯れのつもりだっただろう。

適当にあしらっておけばそのうち飽きると思ったが、彼女は粘り強かった。

最初はいつまでもつかと遠巻きにSと私のやりとりを面白がって見ていた皆も、Sが見せる熱心さに驚きを隠せないようだった。

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