NHK連続テレビ小説『ブギウギ』〜懐かしく新しい昭和歌謡史

奈良原透

『ヴギウギ』〜半年間、楽しみました。

笠置シヅ子をモデルとした朝の連続テレビ小説『ヴギウギ』が終わった。


ストーリーの途中、何度も史実とドラマの相違を確かめたくて、何度も検索しかけたが、ドラマのネタバレにもなってしまうので、我慢した。


ようやく史実を検索できる時が来た。


私の知っている笠置シヅ子は、もう歌手を引退された後で、ファミリーのど自慢の審査員として、いつも優しい笑みを浮かべている方というイメージだった。


「東京ブギウギ」、「ジャングルブギ」などは小さい頃から当たり前のように聞いていたが、ご本人の歌唱シーンは見ることは叶わなかった。


ご本人の若い時代のエピソードは、戦前•戦中•戦後の昭和歌謡史を振り返る番組や、ドラマなどで断片的には知っていた。


けれど、これらのエピソードは断片的であった。


例えば、美空ひばりとの「東京ヴギウギ」を巡るエピソードは、美空ひばりに焦点を当てた「美空ひばり物語」では笠置シヅ子が悪者に描かれ、また、別のドラマでは美空ひばりのマネージャーである母の横暴のように描かれていた。


エピソードを断片で描かれると、どうしてもその作品のテーマに沿った視点からの主観になってしまう。


だから、『ヴギウギ』は、私が直接知らない昭和歌謡史を紐解いてみる上でも、有意義な作品であった。


朝ドラは一週間で一つのエピソードを描くというのがお約束である。


この作品も少女時代からそのフォーマットで進む。


嬉しかったのは、歌手デビューをした後は、数々のヒット曲をテーマにその誕生までを描き、金曜日(一週間の最終エピソード)でステージシーンを披露する週が増えたこと。


ミュージカルファンとしては、これが嬉しかった。


そして、笠置シヅ子だけではなく、淡谷のり子、服部良一らのエピソードも多く取り入れられ、そこも興味深い。


特に、アメリカの音楽であるブギ(敵国の音楽として禁止されていた)のリズムを使って、中国人が書いた「夜来香」を、日本人の服部良一がアレンジし、終戦前夜の上海で演奏した「夜来香ラプソディ」のエピソードが、まるまる一話使って描かれたことは嬉しかった。


昆夏美が李香蘭に扮してこの回だけ登場するという豪華さも見事。


全体として、丁寧な作りで、半年間楽しめた。


最終日もこれまでの登場人物達が次々と登場する大団円。


じつは、気になっていたのが、放送中からあった実話を“良い話”に変えているというネガティブな意見。


最終話も“都合の良い絵空事”などという意見を読んでしまった。


もちろん人の意見はそれぞれなのだが、私としては、さわやかな朝の8時から15分放送する番組に、リアリティやドロドロを求める人がどの程度いるかということである。


まあ、大ヒット作の「おしん」は、嫁姑等かなりドロドロした内容も含んでいたが、、、


当時は嫁姑のドロドロが受けていた時代だから、時代が求めていたと考えましょう。


もともと笠置シヅ子の生涯を基にしたフィクションなのであるから、起こった事実をそのままトレースする必要はないのである。


ドキュメンタリードラマ作っている訳ではないのだから。


それよりも、この作品を通じ、例えばOSKの存在を知った人も多いだろうし、笠置シヅ子のヴギウギ、淡谷のり子のブルースを知った方も多いと思う。


この方が、私には大事なことに思える。


だいたい昔の芸能界、特に戦後の芸能界など、今から考えるとタブー的なことが多かったろう。


そのディープな辺りをうまく処理し、気軽にドラマを楽しみたい私たち視聴者に優しい構成になっていたと思う。


特に、私は美空ひばりは登場しないんではないかと読んでいたら、しっかりと美空ひばりをモデルにした歌手が登場し、その歌手の設定が前半部のOSKをモデルにした梅丸歌劇団(USK)時代の伏線回収という驚きのフィクションで、こちらの考えていたノンフィクションをブチ飛ばすという大技でお見事だった。


また、笠置シヅ子のアメリカ公演をアテンドしたのが、ジャニー喜多川、メリー喜多川姉弟であったことは知られた事実であるが、アメリカ公演の前後の家に残る娘さんとのエピソードに絞り、アメリカ公演自体をすっ飛ばしたのは、そりゃそうだよなと思った。


現在、様々なことを取り沙汰されている方を敢えて登場させることはない訳だ。


先ほど、朝の15分と書いたが、私自身は録画していたものを週末に纏め見しており、歌唱シーン、ダンスシーンの多い本作は、週末に心落ち着けて楽しむ作品として、本当に有り難かった。


趣里さん、菊地凛子さんのお二人はとにかく見事だったし、最終回を見ると、確かに私がテレビを見始めた時には笠置シヅ子さんは優しいオバちゃんとしてテレビに出ていたし、淡谷のり子さんは最後までバラエティに出る時も素敵なドレスを纏い、歌い続けてらっしゃったなと思う。


役者さんを始め書きたいことは色々あるので、それは、次章以降で。




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NHK連続テレビ小説『ブギウギ』〜懐かしく新しい昭和歌謡史 奈良原透 @106NARAHARA

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