魔王戦記
ゆずかぼちゃ
プロローグ
プロローグ1 日常
「――
※『オルドシア
「アベル! アベル!! ちゃんと聞いてるの!?」
ああ、そうだ。今は歴史の授業中だったっけ。
「ちゃんと聞いてるよ。シアンお姉ちゃん」
正直なところ、ぽかぽかとした
「お姉ちゃんじゃなくて、今はシアン先生でしょ。せっかく頑張ってお姉ちゃん、それっぽい
「はーい、シアン先生」
自分だってお姉ちゃんて言ってるじゃないか。を
「アベル、怒られてやんのー」「やんのー!」
年少組の冷やかしに混じって、幼なじみの少女、へカテがくすくすと笑っている。勝手にやってくれ。
仕方ないので、真っ白なノートに目線を持っていく。
「はいはい、それじゃあ、へカテ。アベルにも分かるよーに
「はい、先生。……魔人戦争は今から約千年前から二百年間、魔法を使う
へカテは俺の頭を自分の胸に引き寄せながら、
「お互いに大きな傷を負った彼らは、終戦後、仲良くしましょうと言ってるけど、まだまだ問題が山積みなので、私達とアベルが超仲良しな所を世界中に見せつけましょーってことです」
へカテは満足そうにこちらをチラと見ながらイスに座り直している。
「よく出来ました」と
そう。ここは魔族達が住む
…実は数年前までいずれは自分にも、姉のような立派なツノやキバが
カーン、カーン、カーン……
「せんせー、さよーならー」「ならー」
「はい、さようなら。気をつけて帰るのよ」
はーいと言うのが早いか、ドアから
俺はここが家なので、帰る必要は無いのだが、夕飯の買い出しと、そのついでにへカテを家まで送るのがいつもの流れだ。
「じゃあ、シアン先生。私も帰るね」
「うん、じゃあねへカテ。あっ、今度ごちそう作るからさ、家族
「先生、誕生日だもんね。お母さんも『とびきりのごちそう持っていく』って張り切ってたよ」
「わあ、春カボチーのパイ包みかな?あれすっごくおいしんだよねー!」
すっかり女子トークモードになってしまった。このままではへカテが家に泊まると言うまで続いてしまう。
「ほら、へカテ。暗くなるまでに帰るぞ」
ふたりとも
「じゃーねー! へカテ、アルテさんにもよろしくねー! アベル、しっかり送るのよー!」
手をぶんぶんと振りながら、大声でシアン姉ちゃんが見送っている。シアンとへカテ、どっちが年上なんだか。
□
帰り道。俺にとっては買い物道。
「アベル、先生への誕生日プレゼント決まったの?」
誕生日すら忘れていたのにプレゼントを用意しているはずはない。なあに、いつも通り村近くの花を
「もう、ほんと女心わかってないんだから」
まるで
「当たり前でしょ。女の子ってのはね、自分の
さらに自分の好みに合って、なかなか買えない高級品なら、なおベターと付け加えた。結局は金じゃないか。
やれやれと大げさにため息をつきながらへカテが歩いていく。
「へカテはプレゼント、もう決まっているのか?」
「もちろんよ。前に行商人さんが来た時にね、
思ったより
しかし、髪どめか。確かにシアンお姉ちゃんの赤くて綺麗な長い髪に似合うだろう。それに
「もうっ、誕生日、
そうだな、今晩にでも考えておくか。だが、ウチ貧乏だしな。髪どめすら今の俺には買えない。家自体は村で一番大きいのに、その日暮らしすら苦労している。家で教師の真似事をしているのも
「じゃあ、また明日ねアベル」
いつの間にかへカテの家に着いていた。
じゃあ、また。と軽く手を振りへカテと別れた。俺もそろそろ帰ろう。
……何を買うのか、聞くの忘れてた。
□
――その日の夜、風呂に入りながらシアン姉ちゃんへのプレゼントについて考えていた。お金は
…花と木の実をツルで
「ネックレスがなんだって?」
「ね、ね、ね、ねねねねね姉ちゃん!? いつからそこに? というか、なんで入って来てるの!!?」
そこにはすっ裸で腰に手を当てたシアン姉ちゃんが立っていた。シアン姉ちゃんは、鍛えられた引き締まった肉体なのに出るところは出てて、ってそうじゃない、いつの間に風呂に入ってきたんだ?
「姉ちゃんだって?なまいーきぃー♡いつもは『シアンお姉ちゃん♡』て呼んでるくせにぃー♡」
うっうるさいっ、それに♡は付けてない。それより質問に答えろよ。
「いーじゃない、親子で
「自分で洗えるよっ! もう九歳なんだから」
「まだ九歳よ。それについこの前まで『
そ、そうだっけ? 少なくともそんな
「ほらほら、はやくっ、はやくっ♡」
こうなっては姉は非常に
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