主催者による、応募作品への簡単な感想
生活支援ロボの霜川君なのです。/暗黒星雲 への簡単な感想
応募作品について、主催者フィンディルによる簡単な感想です。
指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。ただフィンディルの解釈する方角が正解というわけではありませんので、各々の解釈を大切にしてくださればと思います。
そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。
ネタバレへの配慮はしていませんのでご了承ください。
生活支援ロボの霜川君なのです。/暗黒星雲
https://kakuyomu.jp/works/16818093074330354084
フィンディルの解釈では、本作の方角は真北です。暗黒星雲さんの宣言と同じですね。
去年の回でも述べましたが、ギャグとコメディの違い。
今回もしっかりとした考察は割愛しますが、設定や物語を通した構成的・大局的なおかしみを志向するのがコメディ、センスや世界観や表現技法を用いた局所的なおかしみ(の連続)を志向するのがギャグというのがフィンディルの理解です。
設定や物語の妙がコメディの土台ならば得られる面白みや求められる素質は一般的なエンタメ小説に近しいため、コメディは北との親和性が高い。構成や構造を重要視せずに(作者の)世界の発露がギャグの土台ならば得られる面白みや求められる素質は(作者の)内面世界を表現する小説に近しいため、ギャグは西との親和性が高い。これがコメディ・ギャグに対するフィンディルの基本的な方角理解です。
なお(全てのジャンル・方角がそうであるように)ギャグとコメディを明瞭に区別することは不可能であるとも述べておきたいと思います。
本作をあえてジャンルに収めるならばギャグコメディと呼べるだろうと思います。
「出来事が起こり、出来事が落着する」という根っこのストーリーラインはコメディ的ですが、それの妙から面白みを拾っているわけではなく場面場面の“奇天烈”から面白みを拾っているのはギャグ的であるとも判断できます。
土台はコメディで上に乗せているのはギャグ、ということでギャグコメディ。ただそういう意味のギャグコメディは何も珍しい作風ではなく、純然たるコメディ純然たるギャグのほうがむしろ稀だろうとも考えています。
(大局的なおかしみを志向する)コメディを小説における物語構成、(局所的なおかしみを志向する)ギャグを小説における描写・修辞とするならば、ギャグコメディはつまり「描写に凝ったエンタメ小説」ですので方角は真北とするのが妥当だろうと考えます。作品によって北北西に傾くくらい。
ただ暗黒星雲さんのコメントなども加味するかぎりでは、本作の実態はギャグコメディというより“ギャグに憧れているコメディ”と呼ぶほうが近しいだろうと考えています。
ストーリーラインはエンタメのフォーマットを用いているが、その場面場面で“奇天烈”を起こすことでギャグらしく見せたい、そういうような意図をフィンディルは受けました。
コメディにしてはストーリーの繋がりや盛り上げ方、キャラ造形などが粗めなのですが、この粗雑さは稚拙によるものではなく、ギャグ然とさせるためにあえて配置・放置したものだろうと解釈しています。暗黒星雲さんの(エンタメの)実力ならばもっと綺麗に繋げることができるはずですしね。
事実、この工夫により本作はコメディらしさをある程度抑えることに成功しているように感じます。
そのうえでフィンディルが感じたのは、ギャグが弱いというところです。
ギャグが弱いというより、(作者の)世界の発露を感じないというほうが近いでしょうか。
本作には、パロディ・スケベ・ミーム・メタ・(軽い)ブラックなどのギャグ表現が用いられていますが、その全てが「どこかで見たことがある」に留まっているように感じられます。いずれもレディメイドの表現であるように感じられ、これらのなかに「暗黒星雲さんならではのギャグ世界の発露」とフィンディルが受け止めるものはありませんでした。
フィンディルは本作を“ギャグに憧れているコメディ”と形容しましたが、それはコメディが強いエンタメが強いという意味ではなく、ギャグが弱い発露・爆発が弱いという印象によるものと考えています。
ギャグが弱く“ギャグに憧れているコメディ”に留まっているとするならば、ギャグ然とさせるためにあえて配置・放置した粗雑さは必ずしも本作にとってプラスになっているわけではありません。
あえて配置・放置した粗雑さはギャグにしっかり膂力が備わっているからこそ艶となるのであり、相対的にコメディが優勢である本作においては粗雑は(意図的であろうとも)ただの粗雑になってしまうだろうと判断します。
ただそれとは別に、粗雑さをあえて配置・放置するという工夫を施した暗黒星雲さんの意図自体は肯定したいと思います。工夫を施すという作業は創作として楽しいものですし、馴染みない方角への挑戦を推奨する本企画としても喜ばしいものです。いつもありがとうございます。
不条理ギャグによる北西方向を目指したがやはり北方向になってしまったと暗黒星雲さんは仰っていますが、そのとおりだと思います。
そしてその理由は、率直にギャグに膂力が足りないからだろうと思います。人によっては安心感、人によっては古さを覚える“往年のギャグ”と呼べるような本作の表現群は、少なくとも不条理ギャグではない。
仮に本作のギャグに相応の発露・爆発が伴なっていれば、それだけで北北西や北西に感じられたのではないかと想像します。
あるいは「あえて“往年のギャグ”を連発してみた」というメタ作品なら別の捉え方もできますが、本作からそのような達観を感じるかと言われると、フィンディルはそこまでは感じませんでした。
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