MoonDarker:Soul

@pap1dem0

-Chapter 1-

Part 1 -黒野事件・聖霊都市編-

Episode:1 陰に潜むモノ

物心がついた時からずっと、自分に言い聞かせている―――。

"死"っていうモノは―――。


―――いつも突然訪れると。


カゲフミ…それがオレの名前。若くして両親から捨てられ、

その出来事から自分の意志だけで生きてきた13歳、中2。

父は4歳の時に、”海外で自殺した”とニュースでは報道されたものの、

まだ何処かで生きている可能性が高い。

そして母はある日から、姿を消した。

それは何の前触れもなく。気付いた時にはもう遅かった。

…何でこのような行動をとったのかは、あの日から約10年経った今でもまだ不明。

でも一つだけ言えるのは―――これらの行動が、意図されて行われたというコト。

…そんな感じでオレはその時から、残されたわずかな道具モノ

フル活用しながら、今日いまを生きている———。


そんな過去を思い返しながら、オレは電車に乗った。

自分が座った席には誰も、人がいなかった。

…果たしてこんな日が、何日続くんだろう?

いつも夜中まで、町中をフラついている日が———。

こんなに長い間、それを繰り返していたら、

いずれはおかしくなってしまうかもしれないのに。

そんなコトを今更後悔しながらも、何処か分からない場所なのに、

オレは電車を降りてしまった。

もう身体が限界を迎えそうだ...近くに何処か、休める場所は...。

...! 近くにベンチがある…何とかここで…休めそうだ…。

…ベンチに座った時には既に、オレは眠っていた。


…あのまだ楽しかった頃の思い出が愛しいなー…。

大抵アニメや漫画のキャラクターとかは、親無しで生活してるコトが多いけど、

現実ではこれは、ありえないんじゃないのか…?

でも、両親に会った時に何と言えばいいのか、今のオレにはまだ分からない。

いや、分かるはずがない。分かったとしても、オレは今、会いたくない。

最後に…ちゃんとしたご飯食べたののいつだっけ…。

風呂に入ったのも…誰かと話したのも…。

これは本当に…最初から決まっていた展開なのか?

…それとも、これらの展開がオレは元から”孤独”だった、

とでも気付かせたいのか…? そりゃ小さい頃は家族と暮らしてたけど、

ソイツらにも結局は裏切られたみたいなモノだから…。

そういや一人だけ、友達がいた気がする…誰だっけ。顔も声も覚えてない。

もう4~5年も前の出来事だから、鮮明には覚えてられない。

…何が言いたいのかというと、その人を除くヤツらは、全員”敵”。

唯一の親友以外に、味方をしてくれるやつは、もうここにはいない。

今のオレは、そうとしか思えなかった。

それに…ここからすぐ明るい方へと進めると、思っていいのか?

オレを独りにしたも同然の世界でだぞ? 夢の夢でしかないよ、そんなコト。

…そもそも…今オレは、自分の”心”と会話している。

それも今までずっと、それを繰り返してきた。他人との会話なしで。

その時点で、オレはとっくに”孤独”なんだ。

そんな絶望的な状況の中で、この先”運命の人”が訪れる…?

…そんな漫画みたいな展開、起きるモノなら、起きてほしいモノなんだけどな…。

憂鬱だったけどオレは立ち上がり、都会の方に向かって歩いた。その時だった。

…刃物がオレの背中に刺さった。


「———!!」

思わず叫び声を上げそうになったが、

そんなことが出来るほどの体力は残ってなかった。

誰だ、と後ろを見たものの、後ろには誰もいなかった。

…じゃあ、この謎の攻撃は一体…?

「———ッ!!!」

刃物は次々と、色んなところを刺していく。

終いには、腹部まで刺されてしまった。

———物心ついた頃から、自分に言い聞かせてはいた———。

"死"っていうものは…いつも突然訪れ…る……。

倒れる音がした。オレはココで、もう終わりらしい。


…つまらない人生だったと思う。無限にあったやりたかったコトに、

一つも手を付けられてなかったせいか、

それとも今まで不満しか抱かなかったせいなのか———。

…ダメだ…水に流せ……。

いつまでもそんなコト気にかけるから…オマエはすぐに

立ち直れなかったんじゃないのか…?

…もうダメだ、何も考えず、眼を閉じろ……。


———しばらくすると、一人の男性がやって来た。

男性は、倒れたカゲフミを見ながら、困惑していた。


…誰がやったか分からないようにするために、物を操る力を使って刺したけど…。

何とか急所の部分は避けて刺したから、死んでない…よな?

すると自分の後ろから、一人の男がやってきた。

確かこの人は、この子の殺しを依頼した、この子のお父さんだったっけ...。

「…素晴らしい。よくやってくれた。Good jobだ。

一流の殺し屋の君に依頼して、正解だったよ。」

その子の父親は、何故か嬉しそうに言った。

「…自分達は殺し屋です…けど、こんな子供を殺す組織じゃないです。

自分じゃなくて他の人を雇うべきでしたね。何で殺そうと思ったんですか。」

その子の父親にオレは、自然と冷めた態度で話していた。

「…一家の恥。それだけだ。」

その言葉の言い方から、この人は自分の子に、

かなり不満を持っていたのだろうと考えられた。

「…アナタみたいな人の子供に生まれて、この子も悲しかったでしょうね…。

子供を殺して貰った報酬なんて、自分は何も嬉しくありませんよ。」

「…オマエ…それでも殺し屋と言えるのか?」

まるで報酬を貰って喜ぶのが当然のように、カゲフミの父親が皮肉げに言った。

「…殺しを依頼したくせに、そんなこと言わないでください。不愉快だ。」

「…フン。」

「...オレは正当防衛のつもりでやったと言うつもりですからね。」

「…勝手にしろよ。そう言ったとしても、刑務所行きは変わらねェんだから。」


———一瞬にして、カゲフミの父親は姿を消した。

そしてカゲフミはまだ、微かに意識を保っていた。


…意識が朦朧とする…。遠くで救急車のサイレンが聞こえる…。

そしてそれは段々と大きくなっていく…。

誰かが通報してくれたのだろう。知らない誰かが…。

…それからのコトはあまり分かっていない。意識が完全に上の空だったからだ。

どうやらその間に手術をする為に、麻酔をしていたからなのか。

…麻酔の効果が切れたのか、オレは静かに目を開けた。

そこには医師と看護師らしき人がが数人かいた。

「…やっと起きた。心配したよ。目を開けることが無かったんだから。」

どうやらかなり長い間、意識を取り戻せなかったみたい。

でも...ここはオレの行きつけの病院だってコトは分かる。

「…オレは今…どんな状態なの?」

「…一応手術は成功。でもね、それもかなりギリギリだったかな。」

「…アレは誰がやったのか…分かってたり…しないの?」

「それがね…まだ不明のままなんだよ。でも、無事で何より。

だから今日は家に戻って、ゆっくり休んでね。自分で、起きれそう?」

起きれそうだったので、ベッドから出ようとした。

「…大丈夫。…!!」

立ち上がっても痛みが殆ど無く、何とか歩くコトは可能だった。

とりあえず受付らしき所に着いたオレは、近くにあった椅子に座った。

すると同じ椅子に座っていた少女から、声をかけられた。

「…あっ。さっきの人。手術成功したんだ。心配したよー。

急に道端で君が倒れてたんだから。」

…オレと同じくらいの年かな…?

「…アナタが…オレを119通報した人なんですか…?」

「そーそー」

…何で初対面なのに、タメ口なんだろ…。オレのコト知ってんのかなー…。

「…アナタの名前は?」

「…白石美月シライシミヅキ。13歳。中2よ。」

…やっぱ同い年だったか。

「…黒野陰文クロノカゲフミ…奇遇じゃん。13歳で同じ中2だよ。」

「あホント? …それにしても可哀想だねー…親も来てくれないなんて。」

…!! そうだ…と、自分の記憶が蘇ってきた。

「オレは親から捨てられたんだ…。

今日あったあの事件も、どうせ父親がやったんだ。

そんな子供を捨てて、今日も何処かに逃げるような両親に、

オレは育てられてたんだよ。」

「…家は?」

「…あるけど、道に迷って辿り着いた場所がココだから、

どう帰ればいいかも分かんない。ていうか、その家はもうすぐ撤去されるから、

どうせ帰ったとしても、無くなっちゃうよ。」

「じゃあさ、今日はワタシの家に泊まってかない?

ちょうど空き部屋が一個あるからさ。」

まるで前から考えていたかのように、ミヅキ…さんは言った。

でも本当に良いのか…? と、勘ぐった。

「…良いの…?」

「…だってさ、顔からしてキミ、何日も食べてないでしょ。

それに、"助けて"って、その表情とかが示してんじゃん。」

泊まることをまだ自分の心が許してなかったのか、

すぐに”じゃあ今日はお邪魔しますね”とは言えなかった。

「…もう少し考えさせてほしい。」


一方その頃、あの人物は、本部へと脚を運びつつあった。


オレは本部に戻り、”小会議室”とある場所の中に入った時、

すぐさま自分に照明が照らされた。

「”Ultimate Curse”…。キミ、彼を殺すつもり、なかっただろう?

何よりも、臓器の部分を刺さなかったらしいじゃないか。

さては…まだ助かる範囲で刺したな?」

ハハッ…裁判でも受けてる気分だよ。

「…子供を殺さずして…何が悪いんでしょうか?」

「…”よくやった。それでこそ、殺し屋だ。”と言いたかった所だが、

あくまで殺し屋は、悪人、犯罪者の始末の為に存在するモノ…。

単に何の罪もない子供を始末するために、あるモノではない。」

「…オレは正当防衛のつもりでやりましたよ。これって成立します?」

「…無論、成立だろう。ここまで条件が揃っていれば、尚更だ。

...っていうワケだから、もうキミ、戻っていいよー。」

「…了解です……。」


一方カゲフミは、”ミヅキ”の家へと脚を運びつつあった。


結局来ちゃったけど、この人の家は自然に囲まれてて良いなー…。

そんな感じで、オレは今、ミヅキさんの家の中にいた。

「ここがワタシ達の家よ。もう遅い時間だから、空き部屋で寝な。」

「うん…。中に入ったら、早速寝かせてもらうね。

今日はもう疲れ切ってるんだ。」

「うん。オヤスミー」

「オヤスミ」

そう言ってオレは、空き部屋のベッドへと向かった。


―――カゲフミはまだ、気付けずにいた…。

“何故ミヅキが初対面の他人を自分の家に入れられる”のかを。


-To be continued to Episode:2-

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