生きている奴が

生きている奴が

生きている奴が一番偉い。俺はそう思う。でもふと思うことがある。死んだ人間はどうなるのだろうと。もう評価されないんじゃないかって。

偉人は歴史に名を残すことをしたから後世に語り継がれている。だけど、歴史にも乗らない人間はどうなるのだろうって。

そんなことを考えていた矢先、友人が無くなった。マンションからの飛び降り自殺だということを遺族から聞いた。

その時俺に何ができるのだろうと考えた。彼が生きている間に俺たちに残したことを書くしか、伝えるしかないと思った。

彼が俺に残してくれたこと。それは生きている奴が一番偉いってことだ。彼が亡くなる前日俺は彼と一緒に下校をしていた。

その時の別れ際彼が聞いてきた。「一番偉い人間は誰だ？」って。俺はその質問に対して立ち止まって考えたが、答えられなかった。その時に俺は誰が偉いのかを決めきれなかった。

総理大臣か？天皇陛下だろうか？それとも歴史に名を刻んだ偉人たちのことだろうか？そんな考えが一瞬で頭の中を埋め尽くした。

「分からないのか？」彼は笑いながら俺を馬鹿にするように頭を叩いて教えてくれた。

「今を生きている奴だ。そいつがいないと今が無いだろ？」胸を叩かれて彼なりの答えを教えてくれた。

その時に俺ははっとさせられた。彼の言うとおりだ。未来を作り上げるのは今を生きる俺達だけだって。そのことに気が付いた俺は本当に分かれる直前にこう言った。

「明日を作ろう」って。その時の彼のバツの悪そうな顔の正体は翌日、知ることになった。

未来を作るのは今を生きる俺達。過去を彩ってくれたのは過去を生きてくれた人たち。未来を作るのは未来を生きていくであろう人たち。

当たり前のことだけど、今の人はそんなことに気が付いていない。簡単に死ねだの殺すだの口にしやがる。本来俺達生きる存在にとって死とは最も遠い存在であるのに身近にしている。

今日を生きている奴が一番偉い。頑張って生きてる奴も一番偉い。だからそんな人を見ても笑うな。馬鹿にするな。

もう一度だけ。

今を生きている奴が一番偉い