第10話 頼りになる母

「お嬢様‼もう行く時間になりましたよ‼魔法の練習するのは立派ですが、パーティーにいきましょう‼」

「わかってるわよ‼はぁ…何時間くらいかかるのかしら。」


私はため息をつきながら魔法の練習の手を止めた。私の練習の相手になってくれたのは、ゼノンとここの施設の的だ。ここの的は特別性のようで、私が全力で力を振るってもまるで壊れやしない。


まるで高くて厚い壁を、必死になって破壊しているかのようにまるで効果はなかったのだ。

今の私の力では少なくともあの的を破壊することは出来ないだろう。


「…着替え終わってるからすぐに行けるわ。お父様とお母様は?」

「旦那様はもう馬車に乗り込んで待っています。奥様はもう少しかかるようですが、問題ないそうです。」

「そう。…私が遅れてまたせるわけには行かないし、私も行くわ。」

「分かりました‼私についてきてください‼」


リーナの後をついていくとものの数分で馬車の眼の前にまで来ることが出来た。途中途中、来たときとルートが違っていたけど…もしかしたら、この屋敷に何か秘密があるのかもしれない。


私が馬車に乗り込むと父が笑顔でわたしのことを迎え入れてくれた。


「大丈夫かい?本当ならこんなとこにつれてきたくはなかったんだけど…こればっかりはしょうがなくてね。許してくれ。」

「もう前にも聞きました。別に私は怒っていませんよ。流石に直前に言われたり、無理やり行かせようとしていたらお父様のことは嫌いになっていましたがそういうわけでもありませんんし。」


私がそう言うと父はなぜかその場で固まってしまった。私は心配になって父の顔を覗き込んだ。


「お父様?大丈夫ですか?」

「うん…大丈夫だよ。娘に父親が嫌われるのは仕方がないことだ。他の所のやつも言ってたし、しょうがないのかもしれないな。うん。」

「ちょっとお父様‼私はお父様の事を嫌いとは言っていません‼なんでそんな悲観しているんですか‼」

「私の事が嫌いじゃないのか?」

「当たり前です‼確かに強引に行かされたりしたら嫌いになっていましたが、お父様は私の要望を汲んでできる限りの事をしてくれたじゃないですか‼ダンスの相手だって命令してきたりすることなかったですし…」

「そっかぁ…良かった。」

「嫌いになったらこうやって話もしていません‼」


私がそう言うと父は少し笑った。

父は何処か疲れているようで表情も少し暗い。

ここに来てからもずっと仕事をしていたようで、目の下にある隈が少し目立っている。


「お父様。その隈どうにかしたほうが良いですよ。お父様もパーティーには参加するんですし、隈が目立っているようでは何か言われるかもしれません。」

「まぁ…お前もそのうち分かるかもしれないが、これはなしょうがないものなんだ。上位の貴族になればなるほどこの隈も目立つだろうな。まぁ頑張りの証拠だと考えてくれ。」

「えぇ…それで良いんですか?」

「今までもこれでやってきたしなぁ…今更何か変えてもってところはあるな。」


私は少し驚きながらも、父がそう言うなら…と考えておくことにした。

そんな事をしている間に、母親も準備を整えてやってきた。


「遅れてごめんね‼予想以上に準備に時間がかかっちゃって…」

「良いんだよ。さて…出発してくれ。」


私達は予定の時間を少し超えてしまったものの、特に大きな問題なく出発することが出来た。道中も舗装されているお陰で大きな揺れもなくゆったりとすることが出来た。


そして…ついに王城の前へとついた。

私は父と母に手を引かれて歩き出した。


会場に私達はいち早く入った。他の貴族が到着するのはもう少し後のようだ。

私は父と母に注意事項があると話をされた。


「いいかい?公爵家の人と王家の人達とは仲良くしなくてもいいから、最低限礼儀正しく接してね。もちろんリアのことだから大丈夫だとは思ってるけどね。」


私の父は、わたしのことをリアと呼ぶ。母も同じだ。アリアと言うよりもそっちのほうが呼びやすいのかもしれない。


「もちろんわかってるわ。貴族の階級についてはちゃんと理解してるから安心して。」

「それなら大丈夫そうね。貴方も心配しすぎよ。この子がそんなヘマをするわけ無いじゃない。そうね…ただ一つだけ気をつけておいて。ベルセット公爵家の人には気をつけて。あの家とはちょっとした因縁があってね。貴方に危害を加えようとするかもしれないわ。」


私は少し驚きながらも疑問を口にした。


「流石にこの場で襲ってきたりはしない…よね?」

「わからないわ。全てのことにおいて『必ず』という言葉がないように、急に貴方に難癖をつけて脅そうとするかもしれない。もしもの時はすぐに私達を頼りなさい。」


私は母の言葉を胸に留めておくことにした。

だが私にはそれとは別に疑問に思っていることがある。


それは、前世でベルセット公爵家という家系は存在していない…という物だ。

私の思い違いなら良いのだけど…なにか嫌な感じがする。

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やり直し令嬢は未来を変えるために足掻く 聖羅  @kce65895

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