捏造された幼馴染 幼馴染だと名乗る2人の美少女が「幼い頃に結婚の約束をした」と陰キャの俺に迫って来るんだけど俺にはそんな記憶ないんだが…

栗坊

平凡な毎日

 辺り一面春の息吹を感じる緑に包まれた広い野原の真ん中で1人の男の子と女の子がおしゃべりをしていた。


「ねぇ…。私ね、将来の夢が2つあるの」


「2つ?」


「そのうちの1つはね。大好きな…と結婚する事!」


「結婚? うん、いいよ! 僕も…ちゃんの事大好きだから!」


「やったぁ! 約束だよ。そうだ! 忘れないように指切りしようよ? 『ゆーびきーりげーんまーん、うそついたらはーりせんぼーんのーます。ゆびきった!』 …嘘ついたら本当に飲ますからね? で、もう1つの夢は…」


 幼い2人の男女が結婚の約束を交わしている。あの2人の間にはお互いに「好き」という感情以外にないのだろう。


 打算や妥協の産物で生まれた物ではなく、本当の意味で純粋な「愛」と言っていい。


 微笑ましい光景だ。俺はそれを見てそう思った。


 …それにしてもここはどこだろう? 確か俺は学校で授業を受けていたはずなのだが?


 そう思って辺りを見回していると、突然巨大なトンボが飛んできて俺の鼻に止まった。


 イタ!? イタタタタタ!?


 トンボの鋭い爪が俺の鼻に突き刺さる。それにより俺の意識は夢の世界から現実の世界へと浮上していった。



○○〇



「ううん…?」


「あっ、起きた。もう6限の授業終わったよ?」


 目を覚ますと目の前にはドアップの美少女の顔があった。その美少女は俺の鼻を右手の指でつまみながら声をかけてくる。


 …彼女が鼻をつまんだ痛みによって俺は今しがた夢から覚めたようだ。なるほど、夢の中でトンボが鼻に止まったのは彼女が鼻をつまんだからか。


 彼女は俺の鼻から指を離すとニヤリと笑った。俺はつままれた鼻を摩りながらゆっくりと机から上半身を起こす。


「夕菜…普通に起こしてくれよ」


「いやぁ~…だって普通に起こすのってつまんないじゃん?」


「起こすのにつまらないもクソもないと思うんだが…」


「ほっぺたにチューとかして起こした方が良かった?」


「余計悪いわ!」


「えぇ~いいじゃん別に。私らの仲だしぃ?」


「いや、流石にその…キスとかは彼氏にしてやれよ…」


「私、彼氏いないも~ん。あっ、よーへーが彼氏ならチューしても問題ないよね?」


「…そういう事は軽々しく言うなよ」


 俺の名前は長岡陽平ながおかようへい。普通の陰キャ高校生である。


 さっきから俺におちゃらけた様子で絡んでくるこの美少女の名前は佐々木夕菜ささきゆうな。俺の幼馴染…らしい。


 「らしい」というのは俺にその当時の記憶が無いからだ。なんでも小さい頃…小学校低学年ぐらいの時期(…と言っても通っていた小学校は別)に彼女とはよく遊んでいたらしいが、俺には何故かその時の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。


 小学校高学年に上がると同時に夕菜は親の都合で引越した。そして2年前…この高校に入学した際に偶然にも同じクラスになり再会。


 …というのが夕菜から聞いた話だ。


 それ以降、俺たちはよくつるむようになった。なんだかんだ言って彼女とは気が合うし、悪友とも言っていい仲だ。おそらく本当に幼馴染だったのだろう…とは思う。


 夕菜は俺のツッコミにケラケラと笑っていた。彼女は先刻の会話のように適当な事を言っては俺に絡んで来る。こいつはこういう奴なのだ。


 そのせいで女の子と接しているよりは男友達と接しているような感覚に陥るのだが、たまにドキッとする事も言うので女性的な魅力も感じる…なんとも不思議な感覚の奴だった。


 俺は机の中の教科書類を鞄に詰め、あくびをしながら帰る準備をする。


 だがその際にクラスの男子の視線が俺に集まっている事に気が付いた。どうやら先ほどの夕菜の発言にクラス中の男子が嫉妬し、俺を睨んでいるようだ。彼女は美少女なので、よくつるんでいる俺に嫉妬が集まる。


 夕菜がどれくらい美少女かと言うと…このクラス、いや…この高校の女子の中でも頭1つ抜けて美少女だ。俺と仲が良い…という贔屓目を抜きにしても類まれなる容姿を持っている事は否定できない。


 髪型は黒髪ボブカットで目はたれ目気味。その茶色いクリリとした瞳で見つめてこられると思わず赤面してしまう。


 可愛い系の顔というよりはどちらかというと美人系の顔で、これで化粧も軽くしているだけというのだから驚きである。


 背は160ちょいぐらいで女子の平均よりは少し高め。だがスタイルの方は女子の平均を大きく上回っているようで、制服の上からでも分かる胸の大きな盛り上がりが周囲の目線を誘う。


 …たまにこの凶悪な物を俺に押し付けてくるのだから勘弁して欲しい。本人曰く「Fカップだよ~ん♪」とか言ってたっけ?


 声もまた特徴的だ。なんというか…アニメキャラの様な変な声と言えばいいだろうか? しかしその変な声が彼女の適当な性格と合わさって相乗効果で更に魅力を倍増させているのである。


 …と以上が佐々木夕菜という人物の紹介である。


 俺は男子生徒たちの嫉妬をよそに彼女と一緒に教室を出た。



◇◇◇



※当作品は「お試し連載」となります。1週間ほど連載して評判が良いようなら本格連載に入ります。


※投稿予定

6/1(土)~6/7(金)。本日のみ1話と2話を7時に同時投稿。本日19時にもう1話投稿します。

明日からは7時と19時に1話ずつ投稿していきます。


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