第35話 緊急依頼②

 翌日、朝食たくさん食べて、冒険者ギルドに向かった。依頼書版の前で冒険者達が依頼書を取り合っているので、壁際で少し待つ。


 依頼書を受注して冒険者達が少なくなってきたタイミングで依頼書版を確認する。すると、緊急依頼が貼り出されていた。

 

 緊急依頼の内容は偵察・狩猟を行うソルジャー・アントの討伐。被害が多数報告されているため、迅速な対応を求めるというものだった。


 この依頼は受ける一択だな。詳細を聞くため、受付に並ぶ。


 「おはようございます。この依頼の詳細を聞きたいのですが」


 「おはようございます。どのようなことを聞きたいのでしょうか?」


 「個体戦力や規模などを聞きたいですね」


 「ソルジャー・アントはCランクの魔物です。硬い甲殻は物理攻撃や魔法攻撃が効きにくく、前脚での攻撃や酸液を噴射してくるので、武器や防具が損壊しやすいので、注意が必要です」


 「なるほど。ちなみに、他の種や巣はあったりするのですか?」


 「他にはDランクのワーカー・アント、Bランクのウィング・アント、Aランクのクイーン・アントがいます。この3種は巣から出ることはありません。巣は地面に形成され、入口は砂の小山のようになっています」


 「巣の場所は分かっているのですか?」


 「いえ、分かっていないです。ソルジャー・アントが森の浅い場所でも目撃され、実際に被害が出たパーティーがいるので、緊急依頼として冒険者に依頼を出しています」


 「分かりました。この依頼を受けます」


 「あ、ありがとうございます!手続きをしますので、お待ちください」

 

 受付嬢の手続きを終え、冒険者ギルドを後にし、森に向かった。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 「グギャ…」


 「ギ、ギギャ…」


 「グルゥ…」


 ゴブリンやコボルトを蹴散らしながら、森の中を進む。薬草採取は最低限に留め、ソルジャー・アントを探す。


 「お!あれがソルジャー・アントか?」


 【遠視】で少し遠目に見える黒光りする魔物を発見する。慎重に近づいていくと、魔物の全容が明らかになる。


 姿形は蟻そのものだが、大きさが体高3m、体長3mくらいあり、鈍い光沢がある甲殻に、前足の2本がとても鋭利で、一般的な革鎧や軽鎧なら容易く切り裂けそうだ。


【ステータス】

 ・名称 ソルジャー・アント

 ・種族 魔蟻族


 ・称号 


 ・Lv.43


 ・魔力 218


 ・筋力 94

 ・頑丈 96

 ・敏捷 96

 ・知力 94

 ・精神 96

 ・器用 92

 ・幸運 94


【戦闘・戦術系統】

 ・【威嚇】Lv.4

 ・【城壁】Lv.5

 ・【不屈】Lv.5


【回復・耐性系統】

 ・【殴打耐性】Lv.4

 ・【斬撃耐性】Lv.4

 ・【刺突耐性】Lv.4

 ・【強酸耐性】Lv.5


【生産・製作系統】

 ・【狩猟】Lv.5

 ・【運搬】Lv.5

 ・【掘削】Lv.5


【感覚・補助系統】

 ・【魔力感知】Lv.4

 ・【気配感知】Lv.4

 ・【集団行動】Lv.5

 ・【捕獲】Lv.4

 ・【捕食】Lv.4

 ・【酸液生成】Lv.5


 ゴブリン・キングと同程度の強さ。他にソルジャー・アントはおらず、この一匹だけみたいだ。さっさと倒してしまおう。


 「瞬時に、頭上を取れ、空間転移テレポート


 ソルジャー・アントの頭部と胸部の節目に空間転移テレポートし、短剣で節目を斬る。【斬撃耐性】はあっても、こちらの武器の方が性能が良い上にステータスも上回っているので、一刀両断できた。


 『スキル【刺突耐性】Lv.4を獲得しました』


 『スキル【強酸耐性】Lv.5を獲得しました』


 『スキル【酸液生成】Lv.5を獲得しました』


 『スキル【掘削】Lv.5を獲得しました』


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 アリの巣殲滅に向けて良いスキルも手に入ったし、このまま乱獲していこう!その後、【魔力感知】【熱源感知】【気配感知】【嗅覚感知】をフル活用してソルジャー・アントを探した。


 『レベルが66に上昇しました』


 『レベルが67に上昇しました』


 「1日探し回って狩れたのが20匹。アリの巣は見つけられなかったか…」


 夜中は裏組織の捜索があるので、狩らを早めに切り上げ、冒険者ギルドに戻った。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 「これは凄いな!ソルジャー・アントを20匹も狩ったのか!?まぁ、それ以外の魔物も多いが…」


 「ゴブリンやコボルトなどは数えるのが面倒なので僕自身も数を把握してません。今日はこの後、私用があるのでアリの巣は発見できませんでした」


 「ん?緊急依頼では巣の殲滅は含まれていなかったと思うが?」


 「まぁ、そうですね。でも、Bランクのウィング・アントやAランクのクイーン・アントとは戦ってみたいですし、ついでに巣も駆除しておきたいなと思っています」


 「おいおい、欲張り過ぎたら死ぬかもしれねぇぞ。命あっての物種だぞ」


 「そこは勿論、慎重に行動しますが、ここに来る前にはオークの集落の殲滅もしましたし、オーク・キングとクイーン・アント、どちらが強いのか純粋に興味があります」


 「ははは!生粋の冒険者だな!しかし、巣の駆除をするなら、パーティーを組まないと無理だろ?クイーン・アントはAランクの魔物だし、配下も率いているからな」


 「オークの集落を殲滅した時も僕は一人でした。なので、まずは一人で挑戦して、無理だったら、他の上級冒険者の方とパーティーを組むのも検討します。ただ、アリの巣を殲滅するって言っても、承諾してくれるかは分かりませんが…」


 「うーん…確かにな。誰だって命は惜しいしな。坊主…十分気をつけろよ」


 「肝に銘じます」


 「それじゃ、今回の成果は[ヒール草]5束、[マナ草]5束、ゴブリン20匹、ホブゴブリン10匹、コボルト20匹、ソルジャー・アント20匹だ」


 「では、失礼します」


 解体場から受付に向かう。まだ時間帯的には他の冒険者は依頼を受けているので、受付に冒険者は一人も並んでいない。


 「確認お願いします」


 「確認いたします。…凄いですね!この短時間にソルジャー・アントを20匹も討伐したなんて!これなら、緊急依頼は中止しても良いかもしれません」


 「これで被害が無くなるのであれば、良いと思いますが…まだ、巣を駆除できていないので、注意は必要かと思われます」


 「そ、そうですね。ギルドマスターにもそのように報告しておきます。それでは、こちらが報酬の500,000エルケーになります」


 「ありがとうございます」


 報酬を受け取り、冒険者ギルドを後にする。宿屋に戻る途中、露店で少し遅い昼食を済ませる。自室に戻り、お風呂で汚れを落としてから、夜に向けて仮眠を取った。

 

 


 

 


 

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