Episode6 運命の歯車は動き出す







(いや、分かってはいたんだ。エフィや彼女は聞いたこともない言葉で喋っていたし、自分も何故か聞き取れて、喋れているし、それにあんなファンタジーな髪色だし……だけど、やっぱり現実味にかけるじゃないか。でも、彼女の話を聞いてると、魔物がどうとか魔力がどうとかって言っているし……はぁ……もう、認めるよ。)





「どうやら異世界に来てしまったみたいだ。」


「んっ?…なにか言った?」


「いや、何でもないです。はい、文句ないです。異世界様。」


「異世界様?」


「いや、ごめんなさいホントになんでもないです。」





 そんな、くだらないやり取りをしつつ、カナデは自分が恐らく、異世界に迷い込んでしまったという事実を、渋々ながら飲み込んだ。




「そう?ならいいけど……と、そう言えば自己紹介がまだだったね。」


 その言葉と共に、少女はゆっくりと体をカナデの方へと向け、カナデと顔を合わせる。


「私の名前はイル・エヴァレット、よろしくね。」


 そう言って、少女もといイルは穏やかな微笑みを湛えながら、カナデに右手を差し出した。


「はい、よろしくお願いしますイルさん。自分の名前は月瀬 奏、あー、一応言っておきますと、月瀬が名字で、奏が名前です。」


 それに対してカナデは、少し恥ずかしそうにしながらも、イルの右手を取って握手を交わした。


「そうなんだ。ミルラジア共和国出身なのかな?えっと、カナデさんは」


「いや、日本って国の出身です。あと、さん付けは要らないですよ、イルさんは命の恩人ですし、呼び捨てで大丈夫です。」


 首を傾げながら投げられたイルの問いに、カナデは出身地に関しては、特段、異世界から来た事を隠す理由も無いと思った為、“本当の事を言えばいいか”と判断してそう返した。


「ニホン?聞いたことない国……あぁ、呼び捨てでいいなら、私の事もイルって呼んで。どうせなら敬語も無しで、見た所お互い歳も変わらなそうだし、気楽にね!」


 イルはそう言って、カナデに優しく微笑んだ。

 カナデは、そんなイルの言葉にどうするべきか一瞬逡巡をしたが、命の恩人からの厚意を無碍にする方が悪いだろうと考えて、そんなイルの親しみやすさにカナデも微笑みながら──、




「じゃあ、ここはお言葉に甘えさせてもらって、改めて、よろしく、イル。」


 もう一度、挨拶を述べ、右手を差し出す。


「こちらこそよろしくね、カナデ。」


 イルもそれに応え、二人は再度握手を交わし合ったのだった。










 【 運命の歯車は動き出す 】





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