第8話~わいは(驚き)~
鎖に焼け焦げ、へばりついた人差し指が微かに動いた。
ぎょろっと目が開き周りを見始めた。
「あー。気を失っていたみたいだな。」
首を左右に回した。
ヤーミ(ヌエ)は死んでなかったのだ。
「龍だか。神だか。知らないが、俺様を誰だと思ってるんだ。
今度、会ったらしばいてやるぞ。はっはっは。」
鎖を持ち直し、ゆっくりと登り始めた。
「さあて、もうすぐ着くな。青の狼煙を用意しなくちゃな。しかし、3人食べると、さすがに腹が重いな。」
一歩一歩と崖の頂上に近づいた時、ヤーミのお腹が動き始めた。
お腹の中から太鼓を叩いているような音だった。
「どん、どん、どん。」と。
「腹が痛い。いてー。どうしたんだ。」
ヤーミは苦痛に顔がゆがんだ。
「うがー。ぅおえー。」
ヤーミの口の中から手が出てきた。
1本、2本と。次々と。
6本となった時、その手がヤーミの首を絞めた。
余りの苦しさにヤーミが鎖から両手を離し、6本の手を取り除こうとした瞬間、
自分が空中にあるのに気が付いたが遅かった。
「あばば、ひよう。」と断末魔(だんまつま)の叫びと共に、ヤーミは崖の下(底)へ落ちて行った。
崖の下には焼け焦げたヌエの死骸があった。
ヌエのお腹には、3人の顔が浮き出ていた。
顔が笑っていたように見えた。
「あれ、ここはどこ?」
ドン助の目の前には崖の上の大きな木があった。
「ヌエはどこだ。ハナちゃんを帰せ~。」けれど返事がなく、ドン助は一人たたずんでいた。
鷲が空から「ヤーミはヌエとなって死んだよ。」とドン助へ言った。
「えっ・・。ハナちゃんは・・ハナちゃんはどこなんだ~!」とドン助は叫んだ。
その時、ザッザッザザザ、木が揺れだし枝から蕾が出たと思ったら、あっという間に沢山の花が咲きだした。
初めてその木に咲いた花。それは綺麗な桜だった。
それからきれいな花びらが舞い始め一本の花びらの道を作っていた。遠く見えない程に。
雀がドン助に近づき「縄に掴まって。この道を辿ろうよ。」
縄の廻りには雀達や鷲が集まりドン助を促した。
鷲や雀達がドン助が掴まっている縄を引っ張り上げ大空を飛んでいた。
桜の道へ、道をたどり、どこまでも~。
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