第243話 ルービックキューブ 44年目

ここは、岡山大学の学生会館

1階の休憩室のある区画に、突如出現した謎の物体

ピッタリ6面合ったルービックキューブ


無料券の誘惑を断ち切り、2日前に先輩とすれ違い、

ついに、本丸へとやって来た少年。

当時、小学5年生。

彼は、ある映画監督に似た大学生の先輩の手にあるものを見た。


そう簡単にはピタリと合わないはずの、ルービックキューブ

それがなんと、偶然にもぴったりと合ったのである。

後々話を聞いても、そんなことはあとにも先にもなかったそうな。

少なくとも、その監督所有の物体においては。


ルービックキューブの残像は、その後の少年の人生の道標となった。

それだけは、間違いない。

ある小説サイトにある小説において、こんなセリフがある。

神は時として、他人の言葉に仮託して本質を述べる、と。


紙もとい、神に仮託されるのは、他人を通した言葉だけではない。

あのルービックキューブは、言葉ではなく物体自ら、

神の言葉を仮託して、かの少年の進むべき道を示したのである。


そのことに気付くまで、かの少年は44年もかけてしまった。

でも、大丈夫。

彼の人生、まだ残りはいくらなりと、ある。

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