第230話 事実は消えない。

岡山大学前のある喫茶店にて。

ある司法修習生に、彼は尋ねられた。


君はなぜ、司法試験なんかやろうとするのか。就職もいいのに。


時期はバブル真っ盛り。そういう、時代でした。

能力何かさほどなくても、何とかなった、学生にとってうれしい時代。

そんな時期、彼はなぜ、司法試験をやろうとしたのか。


彼はその問いに、彼を孤児に追いやった者たちを叩き潰すためだと答えた。

当然、自由の森にいた事実はそこで隠しようもない。

かの司法修習生は、答えた。


関心はできないな。君、その調子なら金もうけに走りかねない。

何より、養護施設にいたという事実は消えないでしょうが。


そう。

事実は、消えないのである。

どのような手段を用い、彼の敵をすべてひれ伏させられたとしても。

彼はその後、独身をとおしていくことに決めた。

家制度をちらつかせてゴミのような家庭論をほざいた者たちの言葉を、

すべて排除し切るために。

そのために彼は、悪魔とでも手を結ぶと公言している。


それから30年以上が経過した。

彼は今も、一人暮らしを維持している。

奴等を叩き潰すために。

奴等のよすがとなったものをすべて排除するために。


だが、事実は消えていない。

ならば、岩に刻むより他ない。

そう、この電脳の地の岩に。

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