第167話 怒鳴り込まれた日々
彼は、あの地に時々やって来た。
週末の土曜日の夕方。
彼は、来るたびごとに我々の瑕疵を責め立ててきた。
まあ、折角だから上がって飯でも食っていけば・・・
じゃあ、ここで少し与太話でもしていけば・・・
そんな手法は、彼には程なく通じなくなった。
彼は、言う。
飯など食いに来たのではない!
そんなものはどこでも食える!
それは確かにそうだろう。金さえあれば何とでもなることであろう。
だが、何もそこまで言わなくても・・・。
あんたらと与太話などしても、気休めにもならん。
それで何か問題が解決するなり、ゼニにでもなるなりするのか?
そんな・・・、寂しい話ではないか。
寂しい話?
くだらん郷愁ごかしの泣き落としか!?
そんな調子で、感情論など彼にはまったく通用しなかった。
・・・ ・・・ ・・・
もう、彼と会話してもお互い得られるものは何もない、ってことなのか。
それが証拠に、ある時を境に、彼は必要以上にこの自由の森に来なくなった。
得られるものなど何もない場所によたよた来るほど、彼はお人好しではない。
まして、貴重な時間の無駄でしかないと言われてしまっては、な・・・。
彼と和解は、今生のうちに可能なのであろうか。
可能であるとして、それはいつ、どのような形で?
この自由の森という地における彼と私の関係は、
しょせん、対立構造の域を出ないものだった。
そのことを、私はあらためて痛感している。
悪いことに、彼の怒りが如何にもっともなものであったかが、
様々な第三者から漏れ伝え聞こえる機会が急増してきた。
そんなものを仕込んだりするほど、彼はヒマでないはずだが。
彼がモノを言わなくなって日が経てばたつほど、
彼の怒りの正当性が浮き彫りになってきた。
それが浮き彫りになればなるほど、それに伴って相対的に、
過去の自分たちの対応の悪さが立証されている。
そろそろ、覚悟を決めねばなるまい。
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