第145話 昔取ったキネヅカ

かつて私は、大型の時刻表を買って読んでいた。

ボロボロになるくらいには。

鉄道趣味者としての基本には無論のこと、

それは、情報というものに向き合う鍛錬となっていた。


私には、そんな意識などなかった。

だが、私が思い考える以上の効果をもたらしていた。

かくして私は、小学生にして大学の鉄道研究会にスカウトされた。

そこからさらに、私は鍛え上げられた。

無論それだけではない。

テメエでテメエを徹底的に鍛え上げた。


その効果は、年を追うごとにボディーブローのように効いてきた。

そして、私の人生を確実に好転させてくれた。

その反動のような代償も少なからず得たが、

それをはるかに超えるだけのものを、長期的にはもたらせてくれた。


2024年・数え年で56歳の年の盆前。

私は、復刻されている時刻表の電子書籍版を18冊購入した。

電子書籍アプリを使って動作になれると、

送り火を焚く時期が来るまでもなく、すっかり慣れた。


父方の祖父が病を得て死去したのが、この年齢。

その祖父の年齢に追いついた年の、盆期間。

私は昔取ったキネヅカを再確認した。

これからの商売道具になる、そのキネヅカとは、

少年の頃必死で読んだ本たちである。


こうなることを、御先祖様方は心底望んでいたに違いない。

さあしからば、いよいよ本来すべきことをしていかねば。


・・・・・・・ ・・・・・ ・


これは、別作品群に8月16日付で公開の詩を修正の上再掲載したものです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る