第143話 キャンプの帰り

1979年の夏。昼過ぎの国鉄鴨方駅。

駅舎の向こうにある島式ホームに、快速列車がやってきた。

15時12分発の糸崎行。グリーン車もついている。

これ、夜中にやって来る急行「鷲羽」の間合い運用の列車。


この頃のグリーン車、あまり人が乗っていなかったはずだが、

この日はちゃんと、何人か乗っておられた。

年配のおじさんが、リクライニングを倒して気持ちよく休まれていた。

何だか何だか、うらやましくてならなかった。


そのときの私、子ども心にも惨めさを感じていたのかな。

福山方面からやって来た普通列車に乗って、岡山に戻ったはず。

だけど、そのときの列車のことは、何も覚えていない。


新しい電車が来たのは確かだけど、冷房はなかった。

その電車の残党は、21世紀まで生き残っていた。

だけど、だけど! 

あのときのグリーン車、今も覚えているよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る