第125話 土曜日ってあったっけ?
夏休みの間、特に8月は、曜日なんてあってないようなもの。
日曜日がないようなものなら、土曜日なんてとんでもない。
朝から淡々と、暑い日中が続きます。
それでも、今よりは涼しかったあの頃。
特に1980年。
昭和55年は、冷夏と呼ばれる涼しい夏でした。
だからと言って寒いほどだったわけでもないけど。
あの頃、なんだか妙にあの少年への周囲のあたりがよくなった。
あとで聞くと、母方の親族が調査に来ていたこともあったそうな。
わかっていても、ここにおりますとは言えなかったでしょうな。
何かあったらオオゴトになる。責任問題になる。
何より、措置費を得られる「カモ」が1匹逃げてしまうじゃねえか。
だけど、あの少年は必ずや成人後、この自由の森の脅威となりかねない。
下手なことをすれば、わしらが外から叩きのめされかねない。
そんな危機感を持たれたのかどうか知らんが、
あの少年への周囲の対応が異様に良くなったのが、その頃。
アウトソーシングできるところは何とかして、
自分らは、とにかくボロを出さないように。
下手にとどめようなどとしたら、あの少年は必ずいつか、
・・・・・・・ ・・・・・ ・。
彼に必要なのは愛情だの家庭だのといったものではない。
そこに気付いていた職員は、まあ、1人いるかいないか。
まして、彼を鍛えられる能力の持主など、とんでもない。
何とかしないといけない。早いうちにテコ入れをせねば。
子どもらしさという名の子どもだましは、彼には通用しなかった。
それに気づくのには、もう十数年の時が必要だった。
だが今思えば、あの冷夏、
自由の森の幹部職員らの頭を冷やしてくれていたのではなかろうか。
冷夏も、悪くはなかったってことになるかな。
あの年が、チャンスだったのよ。結局は。
彼にとっても、自由の森にとっても。
ところで、土曜日って、あったっけ?
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