第85話 寮という名のおうちの花言葉 1

数年前。正確にいつかはちょっと調べてみないとね。

ま、それは大した問題ではないから、いっか。

と言いつつ調べてみると、確かに数年前。

ちょうど令和に入った年のようです。


自由の森の子どもたちの住む場所の名前。

それまでの「寮」という名を廃止し、別の名前にしたという。

そう、いかにも「家」の名であるという具合に、ね。

そのことは確か、送られてきた広報誌にも書かれていた。

ネットのホームページにも出ているから、そちらで見てもいいや。

今はズバリ、何とか「の家」という名称にしているらしい。

ま、今時「寮」で過ごす人など、絶滅種レベルだからな。

ちょっと、あの頃への怒りを表明しておく。


さてそもそも、あの自由の森に「寮」という概念が入って来たのは、

1981年・昭和56年のことであった。


住宅地から丘の上に移転して、2階建ながら内部に階段のない園舎の、

その1階と2階のそれぞれと、

さらには少し丘を上がって平屋の1階分。

それぞれに、植物の名前を取入れて寮の名前にした。

もう実在しないから、それぞれ名前を述べよう。


2階建の1階 さつき寮

2階建の2階 さくら寮

離れ平屋1階 もみじ寮


こんな感じでした。

取ってつけられた植物も、なんだかいい迷惑な気もしないではない。

移転当時小学6年だったかの少年、さつき寮をかえで寮と読み違えかけていた。

無論、その頃にはかえで寮はなかった。


しかし、彼が自由の森を脱して数十年後。

かつて園長宅だった職員宿舎も児童棟、つまり子どもたちの「家」になった。

そこにはなんと、かえで寮と名付けられていたらしい。


少年の勘違いは、数十年の時を経て、その地に出現したかのような話。

かの少年、今や作家。

ふと思い立ち、かつて自由の森の花言葉となった植物の花言葉を調べてみた。

                        

                       (しばらく、つづく)

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