第65話 くだらん郷愁

彼は、ことある毎に、声を振り絞って言った。


寂しい話だ。


そんな言葉が、これからの時代を生きていく若者の、

何かの役に立つのだろうか。


本人は、感想を述べただけですと主張するかもしれない。

だが、その言葉を向けられた相手は、そうは思わないだろう。

結果、その言葉の主は排除され、罵倒されることとなった。


酒も飲まずに理想の出来損ないに泥酔した人物


彼の理想は、結果的に昭和とともに葬り去られた。

そして、だれも見向きもされなくなった。

見向きして欲しい者が見向き去れないのは、さぞや辛かろう。


一方、そんな彼を排斥した元少年は、淡々と、わが道を進んでいる。

そこはもともと、群れ合いを許されない場所である。

寂しいとか何とか、そんな言葉は何の意味も価値ももたらさない。

そこはもはや、競争とか何とか、そんな言葉とも無縁の場所。

元少年は、今日も淡々と、文字を書き綴っている。


寂しい話?


くだらん郷愁に耳を貸してやるヒマなど、ビタの1秒たりともない。

その世界が、彼の言う下らん郷愁に耳を貸すようになる可能性は、


ゼロ。以上。

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