第72話 自転車の長距離移動

かの作家にとって、自転車の長距離移動は長年の課題だった。

それもこれも、自由の森の移転先のおかげだ。

ただし、良くも悪くも。


自由の森にいた頃は、言うに及ばず。

大学に入っても、仕事場が郊外。

大学を出ても、またも郊外。しかも、前と同じ学区だぜ。


塾を出して、そこからようやく解放された。

その後は、列車やバスでの移動で行ける場所が相対的に増加。

今は、自転車の長距離移動はあまりしなくてよくなった。


このおかげで足腰が鍛えられて健康が維持できていることは認める。

しかし、何かが違うのよ。


何だかんだで、今も彼は歩くことが多い。

公共交通機関の利用が自転車利用の減少に反比例して。

その隙間は、どうしても歩く必要がある。

まさに、街中トライアスロン状態なのである。


免許取ってクルマに乗ればいいのに。

そう思う人もいるだろう。あえて、この低能がなどと罵倒はしない。


だが、彼は言う。

免許も取得せず、ましてクルマなどとんでもない。

そんな金があったら、酒飲めばよろし。

そして彼は、自分を取込んでやろうと縁談を持ちかけた者を粉砕した。

その一言は、これ。


クルマのいる場所、郊外やまして田舎など、人間の住むところじゃねえ!

わしは絶対である。問答無用!


彼の母上様のお話では、破壊力、あり過ぎたらしいです。

それにしても、すさまじいやっちゃなぁ。

あ、それ、わしのことやったわ(わっはっは)!


でも、ちょっと体がなまった気がしたら、自転車に乗って少し走るよ。

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