第49話 ジャガーズクラブへの道
児童指導員を経て園長に就任した彼は、随分逡巡した。
この地の社会性のなさを何とかせねばならぬ。
そのためには、自らの社会性を磨かねばならぬ。
子どもたちが将来自立して確実に生きていけるよう。
働いて税金を払う、逆にもらう立場であったとしても、
そうして得た金を社会に有効な使い方のできる人材として、
世に送り出さなければならない。それが自分の使命なのである。
そして彼は、ついに、ある経営者の集まる団体に加入した。
それを仮に、ジャガーズクラブと名付けて話を進める。
そのクラブで、彼はいろいろな人物と出会ったのだ。
会社経営者、弁護士・税理士等のさむらい業者に。
他にも、社会的地位のある様々な人々に出会う。
それ以降の彼の養護施設職員としての評価。
身内からのものは、悪くなったとの声多数。
ただし、元入所児童の彼はそうでなかった。
これで少しは、ましなことも出来ようもの。
そのどちらが正しかったかは、不問にする。
そんな価値判断など、時間と労力の無駄だ。
ただし、ひとつ確実に指摘できることがある。
彼がジャガーズクラブに加入するきっかけを作ったのは、
間違いなく、その元入所児童の元少年への自由の森の対応だった。
彼が大学に行かず高卒でもいいからうまいこと社会へ出てくれればという、
一部幹部職員のそんな甘くもなめ切った希望的観測を叩きのめした彼は、
それまでの彼らの牧歌的対応を完膚なきまでに叩きのめしてしまった。
彼はいつか、わしらのこれまでの言動を叩きのめしに立ちはだかる。
そのときに、あの青年に見下されてたまるか! そんな真似はできん!
お遊びはこれまでじゃ! わしは、転んでもただでは起きんぞ!
園長のその一念は、ついに、ジャガーズへの道を開いたのである。
もう、昔の牧場の牧歌を歌うような場所に帰ることはできない。
そのことを肌身で知っていたのは、かの園長本人であった。
ってことに、なるね。
・・・・・・・ ・・・・・ ・
注:ジャガーズクラブとは、経営者らで組織する(架空の)奉仕団体のひとつ。
実在のロータリー、ライオンズ等の同種の団体等とは関係ありません。
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