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猫は地球を歩き回る
ぺたぺたとした足取りで
肉球のスタンプを地表に押していく
砂浜に小さな足跡が点々と続いていて
その先に猫がいた
打ち寄せる波を慎重に避けながら
陸地と海の境界線を引いていた
陸地と海は猫が産んだのだ
猫は自分が猫であることに誇りを持ち
そして自分が猫であることを知らない
どっちでもいいのだ
ぺたぺたと地球を歩くだけ
すべてはその足跡によって区切られる
猫と人の境界線も
猫の歩みが産んだのだ
私はいつ人になったのだろう
気づいたときにはもう猫ではなかった
私の歩みはゴツゴツとしていて
猫の歩みとは似ても似つかない
あの猫は私の母かもしれない
父かもしれない
恋人かもしれない
しかしあのぺたぺたとした歩みが
私をひとりぼっちにしてしまった
お前は猫ではないのだと
猫はもうどこかに行ってしまった
波は砂浜に何度も打ち寄せるが
海と陸が再びひとつになることはない
自分が猫だったころのことはもう忘れてしまった
それでもいつか思い出せると信じて
私は人として生きる
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