第203話 レイが好きな物


~セイ~


冥王とセバスが、林王の下へ向かっている時、セイはレイを抱っこしながら、マーサと共に、城の廊下を散歩していた


「あぅ~あ~あぅ~」


セイに抱っこされているレイは、廊下にある花瓶や絵画を、目を輝かせて見ていた


「…レイってまさか、芸術に興味があるの?」


レイの反応を見ていたセイは、横に居るマーサの方に顔を向け、目を輝かせているレイを見ながら質問した


「そうみたい、毎日廊下を通る度に、飾ってある絵画を、嬉しそうに見てるもの」


セイの質問に、マーサは目を輝かせているレイを見ながら答えた


「そうなんだ、なら音楽も好きなの?」


セイは、目を輝かせているレイから目を逸らし、マーサを見ながら質問した


「それは分からないわ、まだ音楽を聴かせたこと無いの」


セイの質問に、マーサは首を振りながら答えた


「そうか!ならレイ!俺が音楽を聴かせてやる!」


レイが音楽を聴いたことが無いと聞いたセイは、レイを持ち上げ、笑顔でレイを見上げた


「ちょっとセイ!あな…「さぁレイ!ピアノがある部屋に向かうぞ!」…セイ!待ちなさい!」


マーサは、セイに音楽なんて出来るのか聞こうとしたが、セイはマーサの話を遮り、レイを連れて、ピアノがある部屋に、速歩きで向かい始め、マーサは、慌ててセイの跡を追いかけた




「着いたぞレイ!」


「あうあ~!!あ~!!」


セイがレイを連れ、城の音楽室に入ると、部屋中の壁に飾ってある絵画を見て、目を輝かせ、手を絵画に伸ばした


「…ちょっとセ…凄い、何この部屋…」


セイの後を追ってきたマーサは、セイに文句を言おうとしたが、部屋中に飾られている絵画を見て感動し、絵画に近づき、触り始めた


「っ!シスター!余り触らない方が良いよ!ここの絵画!殆どが文化遺産並みの価値が有るから!」


絵画に感動したマーサが、絵画に触っているのを見たセイは、慌ててマーサを絵画から引き離した


「えっ、嘘…」


絵画から引き離されたマーサは、顔を真っ青にしながら、絵画を触っていた手を見た


「本当に気を付けてね、もしここにある絵画に、傷でも付いたら…」ゴニョゴニョ


セイは、顔を真っ青にしているマーサに近づき、もし万が一、絵画が傷ついた時に起きる出来事を耳打ちした


「…私、もう二度と、絵画に触らない」


セイに耳打ちされたマーサは、より顔を真っ青にしながら、真剣な表情で誓った



「じゃぁシスター、レイを抱っこしてて」


セイは、ピアノを引く為に、静かに絵画を見つめているレイを手渡そうとした


「分かったわ、おいでレイ「・・・・」あら?」


マーサは、レイを受け取る為に、レイに両を伸ばしたが、レイは、マーサの両手に気づいた様子も無く、ただ静かに絵画を見続けていた


「本当に絵画が好きなんだな…仕方ない、シスター」


静かに絵画を見続けるレイに、セイは苦笑いを浮かべ、レイを両手で持ち上げ、マーサに手渡した


「受け取ったわ」


「・・・・・・・・・・・・」


セマーサがレイを受け取っている間も、レイは、静かに絵画を見続けた


「…ねぇシスター、今日はピアノ引くの止めようか」


絵画に夢中に成っているレイを見たセイは、レイから目を逸らし、マーサを見ながら伝えた


「そうね、ここまで絵画に夢中だと、演奏をしても、聴いてくれないでしょうし」


マーサは、絵画を見続けるレイを見ながら、演奏を止めることに賛成した



その日は結局、マーサとセイは、レイが眠るまでの間、ずっと音楽室で、絵画を見続ける事になった



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