第192話 林王の怒り



 ~林王~


「っ!この気配は!」


「不味いわね、かなり強いわ」


「いったい何者でしょう?」


セイがエルフの里を出た後、強者の気配を感じ取っていた頃、未だに広場に居たハント、ルーファ、林王の3人も、森に現れた強者の気配を感じ取っていた



「林王様!私は今すぐ守護団の下へ向かいます!」


ルーファは林王の方を向き、真剣な表情で、守護団の下へ向かう事を告げた


「ルーファ、頼みましたよ」


林王は、ルーファを心配な表情で見ながら、頼んだ


「はっ!」


返事をしたルーファは、【魔装】を使い、急いで守護団の下に向かった



「ハント、貴方は里に行き、非戦闘民を避難させなさい」


ルーファを心配な表情で見送った林王は、ハントの方を向き、真剣な表情で命令した


「はっ!」


林王の命令に、ハントは頷き、直ぐに里に向かった



「ハント、里の皆を頼みましたよ……さて、長老達にも働いてもらわなくては」


ハントを見送った林王は、木に包まれている長老達を地中から出し、包んでいる木を解除した


「「「「「「「「「「「っ!林王様!」」」」」」」」」」」


解放された長老達は、直ぐ様林王の前で跪いた


「…森の中に、正体不明の強者が現れました、あなた達は、今すぐ里に向かい、守護団と共に、討伐に行きなさい」


林王は、跪いている長老達を、少し睨みながら命令した


「「「「「「「「「「「っ!はっ!」」」」」」」」」」」


命令を受けた長老達は、慌てて里に向かい始めた




「…あの…林王様、ハーデス家の後継者を自称する不届き者は、どうなりましたか?」


ほぼ全員の長老達が、急いで里に向かう中、カイロンだけが、林王の下に近づき、恐る恐るセイの事を聞いた


「カイロン…貴方のお陰で、私たちエルフは…ハーデス家との、縁を切る事になりそうです!」


セイの事を聞かれた林王は、最初は、カイロンを、褒めるかの様に話しつつ、最後は、殺気を放ち、カイロンを睨みつけた


「えっ…」


林王の話を聞いていたカイロンは、最初は、林王に褒められると思い、満面の笑みを浮かべていたが、林王の、殺気の籠った眼に睨まれ、笑顔のまま固まってしまった


「何故セイ様が怒っていたのかは、ハントから全て聞きました!」


林王は、セイが広場を離れてから、暫くだった後、ハントから、カイロンが、セイに言った言葉を、全て聞いていた


「本当にやってくれましたね!冥王様は、必ずエルフにお怒りになるでしょうね!昔、ハーデス家に対し、恩を仇で返した者達が、どうなったか知らない訳でもないでしょうに!これで私は、冥王様に会うことも出来なくなりました!カイロン!馬鹿な貴方のせいですよ!…はぁ~今すぐ私の前から消えなさい!【木龍】!」


林王は、怒りの限り、固まっているカイロンを罵り続け、最後には【木龍】を使い、怒りの赴くままに、カイロンを捕まえた


【木龍】は、名前の通り、龍の形をした木を地面から生やし、自由自在に操る魔法



「っ!林王様!御慈悲を~!!!」


固まっていたカイロンは、【木龍】の口に、咥えられた事で正気に戻り、林王に手を伸ばしならが、慈悲を懇願した


「・・・・・・・・」


カイロンの懇願を無視した林王は、【木龍】を操り、そのままカイロンを、強者の気配がする場所に向かわせた


「林王様ぁぁ!!林王様ぁぁぁ!!林王様ぁぁぁぁ!!林王様ぁぁぁぁぁ!!」


【木龍】に捕まったせいで、腕を伸ばすしか出来ないカイロンは、林王を呼び続けながら、森の中に連れて行かれた



「どうやって、冥王様に許しを乞いましょう…」


カイロンを森に向かわせた事で、一人になった林王は、冥王に謝る方法を考えは始めた




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