第190話 林王への失望



「っ!?」


「よしっ!(決まった!)」


「【防風の鎧】!」


「なっ!」


林王とセイが同時に繰り出した突きは、セイの魔剣が、林王のレイピアを弾き、セイの魔剣が、林王の肩に刺さると思った瞬間、林王は【防風の鎧】を使い、セイの攻撃を受け流した


セイは、受け流された事に驚きつつ、直ぐに体勢を整えた


【防風の鎧】は、全身を風で纏い、あらゆる物理攻撃を受け流す魔法



体勢を整えたセイは、全身に風を纏っている林王を見て、林王に意識を残したまま、どう倒すかを考え始めた


「(【防風の鎧】か…不味いな、あの魔法、かなり厄介だ…破るには、強力な魔法を使うしかないが…あの魔法は、絶対に防御だけじゃなく、行動スピードも上げてるだろ)」


セイが林王を見ながら考えている間、林王も、セイを見ながら、制圧する方法を考えていた


「(…冥王様の子孫を、傷つける訳にはいきませんが…あの膨大な魔力を使い、魔剣ハーデスで攻撃されると、いくら霊体化している私でも、下手すれば死にますね)」


セイと林王の2人は、相手を警戒して、動く事が出来ずにいた



「(…本気で行くぞ!)【火剣白炎】」


暫く、膠着状態が続いた後、いきなりセイが、覚悟を決めた表情を浮かべ、林王目掛けて【火剣白炎】を使った


【火剣白炎】は、名前の通り、白い炎の斬撃を生み出す魔法



「(この白い炎は!)くっ!」


魔剣ハーデスから、白い炎が出た瞬間、林王は、白い炎の威力を感じ取り、慌てて横に避けたが、体の横を、白い炎の斬撃が通った時に出た熱で、腕を火傷した



「(チャンス!)【水剣大波】!」


林王が火傷したのを見たセイは、チャンスと思い、大量の魔力を魔剣に流し、【水剣大波】を放った


【水剣大波】は、魔剣を横に何度も振り、大量の水で出来た斬撃を、何本も生み出し、自身を中心に、全方向に斬撃を放つ魔法



「っ!【風脚】!【木球】!」


林王は、迫りくる無数の斬撃を見て、【風脚】を使い、空を飛び上がりながら、長老達とルーファ、ハントを守る為に、【木球】で全員を包み込み、地中に潜らせた


【風脚】は、脚から風を出し、空を飛ぶ魔法


【木球】は、地面から木を生やし、対象を木で包み込む魔法



「ちっ!仕留めそこねた!」


セイは、林王が、長老達を地中に潜らせたのを見て、悔しそうにした


「…やはり最初から、長老達を殺すつもりでしたか」


セイの言葉を聞いた林王は、セイを見ながら、地面に降りた


「…なぁ林王、なんでそこまで長老達を護るんだ?護る価値なんて、そいつ等には無いだろ?」


セイは、地面に降りてきた林王を見ながら質問した


「いいえ、護る価値はちゃんとあります…長老達は、この里を護るという、大事な役目がありますから」


セイに質問された林王は、目を閉じ、自身が、木で包み込んでいる、長老達の気配を感じ取りながら、慈愛の満ちた表情で、セイに答えた


「(…成る程な…全てのエルフからしたら、林王は神に近い存在だが…林王からしたら、エルフ達は孫や曾孫みたいな存在なんだな…そりゃ、長老達は調子に乗るわな…全く怒らない林王なんて、権力を持つ長老達からしたら、何でも許してくれる、都合の良い王様だろうよ…)…お前、馬鹿じゃねぇの?」


林王の表情を見たセイは、何故エルフの長老達が、あれ程傲慢だったか分かり、納得の表情を浮かべた後、心底馬鹿にした表情で林王を見た


「なっ!」


セイに馬鹿にされた林王は、ショックを受けた表情を浮かべた


「くだらねぇ…もういいや、帰るわ」


セイは、【魔装】を解き、林王に対し、失望した表情を浮かべ、その場から離れ始めた


「っ!待ちなさい!」


セイがその場を離れ始めると、林王が少し怒った表情で、セイの肩を掴んだ


「触るな!王たる資格もない!ハリボテの王が!…」


林王に肩を掴まれたセイは、林王の手を弾き、林王を睨み、怒鳴り付けてから、その場を離れた


「っ!」


セイに睨まれ、怒鳴られた林王は、セイの怒気を感じ取り、ただ離れて行くセイを見ている事しか出来なかった





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