第177話 隠し部屋



「セイ様、こちらです」


部屋を出たセイは、ヒナイトとディランの案内で、王の執務室に向かっていた




「ライア様、何故隠し部屋の事を、もっと早く教えて下さらなかったのですか?」


セイの後ろを歩いていたサクアは、隣りに居たライアに話しかけた



「…隠し部屋は、私の切り札でした…私は、隠し部屋の場所を教える代わりに、息子の命を護ろうと思っていました」


ライアは、悲しげな表情で前に居るセイを見ながら、サクアに答えた



「思っていたという事は、今は違うのですか?」


ライアの表情と言葉に違和感を感じたサクアは、同じ様にセイを見ながら、質問した



「…セイ様だけでなく、冥王様も出て来たのです、私がいくら足掻こうとも、あの方達が息子の命を欲すれば、誰も止めることは出来ないでしょう」


ライアは、息子を助かることが出来ない、自身の弱さに打ちひしがれ、絶望していた


「ライア様…」


そんなライアを見たサクアは、何と声を掛ければ良いか分からず、言葉を詰まらせていた



「はぁ~ライアだったか?」


「はい…」


サクアとライアが話している内容を、黙って聞いていたセイは、ため息を吐きながら、後ろに振り返りライアに話し掛けた



「別に、俺も冥王様も、お前の馬鹿息子の命に興味ないぞ」


「えっ…」


セイの言葉に、暗い表情をして、下を見ていたライアは、顔を上げてセイを見た



「まあ、お前の息子は、既に人類至上主義の思想を植え付けられているから、一生外には出せんが、幽閉で済ませることは出来るぞ」


「ヒナイト殿、本当ですか?」


セイの説明を聞いたライアは、涙を堪えながらヒナイトを見た



「ああ、お前の息子は、魔獣教の被害者の1人だからな」


ヒナイトは、優しい表情でライアに説明をした


「っ!ありがとうございます!」


ライアは、涙を流しながら、感謝を伝える為、セイ達に深く頭を下げた



「(側妃は、人類至上主義の息子を嫌っていると聞いていたが、やはり母親としては、どんな息子でも、助けたいんだな)」


深く頭を下げるライアを見ていたセイは、ヒナイト達から聞いていた、ライアと王子の関係を思い出しつつ、嫌っている息子を助けようとする、母の偉大さを感じていた





「ここが、隠し部屋に行く通路です」


息子が助かる事に、泣いて喜んでいたライアは、泣き止んだ後、セイ達と共に王の執務室に向かうと、部屋に入るなり、直ぐに本棚の仕掛けを動かし、隠し部屋に繋がる通路を教えた


「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」


ライアの素早い動きに、セイ達はただ呆然と見ている事しか出来なかった



「えっと、ライア、通路に設置されてる罠ってどれぐらいある?」


いち早く正気に戻ったセイは、恐る恐るライアに質問した


「分かりません、私もこの先に行った事はないなので」


セイの質問に、ライアは首を振り答えた



「…はぁ~仕方ない、俺が先頭を歩くから、ヒナイト、サクア、ライア、ディランの順番に付いて来い」


「「「はっ!分かりました!」」」


通路を見て、しばらく悩んだセイは、ため息をつきながら後ろに振り返り、4人を見ながら話した


ヒナイト、ディラン、サクアの3人は、声を出して返事をしたが、ライアは緊張した様子で首を縦に振った


「ふぅ~よし!行くぞ!」


セイは通路に入る前に、深呼吸して、魔剣を抜きながら、【魔装】を使った



セイ達が通路に入り進んでいると、途中落とし穴や、壁からいきなり槍が突き出てきたり、上からいきなり岩が落ちてきたり、数々の罠が仕掛けられていた


セイは【魔装】を使った状態で、魔剣で全ての岩や槍を斬り進んで行った





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