【孤独の風来】




 空は青い、俺の知る空より青い



 刑務所を出て、シャバを知り

 灰色を越えて、外を知り

 人の中から消え、1人となり



 俺は、また孤独になる



 孤独は嫌いじゃない。むしろ慣れている

 生まれてこの方、信じられるのは己の身1つ

 友達なんていない。友達はいつも空想の中



 独りぼっちだ。1人、1人、1人

 親は、親戚は、兄弟は

 さあ、考えたこともなかったよ



 宇宙の果てに俺を待ってくれるヒーローはいない



 宇宙人が地球を襲えば、きっと俺は死ぬ

 怪獣が日本を襲えば、きっと俺は潰れる

 ヒーローは大衆を助けて、俺は死ぬ



 嗚呼、そうだな、本当に被害妄想



 それで良いだろ



 一生懸命なんだよ、それだけで



 だから人を殺しかけた、チンケな犯罪者

 だから10年も刑務所にいた、哀れな前科者

 だから刑務所ですら1人だった、朧げな日陰者



 でもな



 ホントに強くて1人でもいれるヤツなら

 人なんて、殺しかけないんだよな

 知ってるよ、強いって、優しさなんだよ



 それだけは知ってる



 だから、シャバに出た俺は決めたんだ



『優しく生きていたい』んだ



 バカにされても、哀れだと笑われても

 それでも俺は、優しく生きようと思ったんだ

 誰にも理解されなくていい、認められなくていい



 でも



 俺の優しさだけは、見ていて欲しい



 俺の証だけは、理解して欲しい





 頼むよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リターン・90 ライダー・The・デッドヒート @rider_the_deadheat

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ