【第45話】王燐の再臨
一日かけて、風龍の鱗の力に耐えうる素材を実験していたが、目ぼしい物は見つからなかった。
私たちは一旦、実験を保留する事にした。
「また目ぼしい素材を見つけたらその都度実験していきましょうか」
「そうですね」
「クベアもまた協力お願いします」
「あいっす!」
そんな事をしていると、外が騒がしくなっていた。
「何かあったのでしょ「ナディ、ちょっと来て!」
シャランが、扉を勢いよく開けながら入ってくる。かなり焦っている様子だったので私たちは急いで、後をついて外に出る。
「あれ、見て!」
指さす方向に目線をやると、森から黒い煙が上がっていた、あの方角はエルフ族の住んでいた場所。
もしかして、また人族が攻めてきたのか!?
「急いで向かいましょう!」
私とシャラン、サクラは数体のゴーレムを引き連れて急いで森へと向かう。クベアとファーネ、エルフ族の皆さんには、引き続き街の防衛をお願いする。
森の入り口まで近づくと火の粉が舞っているのが確認できた、また森が燃やされている可能性がある。また、八獄衆が襲いにきたのだろうか。
森の中へと進んでいくと、奥に火の手が上がっているのが見えた、所々から叫び声も聞こえる。
「ごめん、先行くね」
そう言うと、シャランは木々を踏み台にし、瞬く間に火の手が上がっている方へと消えていった。私も、サクラとゴーレムを連れて奥へと進んでいく。
「きやっ」
エルフ族の一人とぶつかる、状況を把握しようと話を聞く事にする。
「また人族が攻めてきたのよ!」
「やはりそうでしたか、このまま森の外に出て、私の街があるのでそこまで逃げてください」
そうして、すれ違うエルフ族達に私たちの街まで逃げるように伝えながら奥に進んでいく。迂闊だった、場所がバレている以上、また攻められる事を想定しておけばよかった。
「サクラ、気を引き締めてください」
「……」
「サクラ?」
「はははははっ!許せねぇな!!」
「へっ?サクラ?」
「私が奴らをFIREしてやるよぉ!!」
まずい、この前の暴走した状態になっている。前回よりも酷くなっている気もするが。
取り敢えずは協力的な気がするので、このままエルフ族達を街へと誘導しながら、奥へと進んでいく。
徐々に火の勢いも強くなり、煙も多くなってきている、こういう時は人でなくて良かったと思う。サクラもゴーレム達も問題なさそうだ。
煙を抜けて行くと、驚く人物が来ていた。
「王燐、お前か…」
そう、今回攻め込んでいたのは王燐だった。周囲を見渡すが兵士が数人と王燐、そして以前に魔の森でみた盾を構えた男と、杖を構えた少女が隣にいる。
『王燐さん、こいつらで全部です!』
『ふぇぇ〜、これで終わりですかぁ?』
王燐とは追いついたシャランとセーレンが戦っていた、セーレンの方が少し疲弊していそうだ。
全員を逃すために、残って戦い続けたのだろう、しばらくしていると私も含めて兵士達に囲まれる。
『おい、グズ人形…お前もいたのか』
本当に同じ人物だろうか、荒々しい感じがなくなって大人しくなっている。
「ここで一体何を」
『見りゃ分かんだろ、皆殺しだよ』
やろうとしていることは昔と変わらないらしい、ただ、前までなら構わずに襲いかかって来ただろう。
『それにしても、見た目がえらい変わったな、後ろにいる奴らもなんだ?あの狐はどうした?』
「関係ないでしょう?」
『はっ、確かにな…ここで死ぬんだからな、全員』
私は、即座にゴーレム達に指令を出す。王燐さえ殺せれば戦況は大きく変わるだろう。ここは先手必勝だ、その為にゴーレムたちを連れてきた。
腕には開発した大砲を装着している、大砲の口を王燐に向けさせる、着火に関しては完了してゴーレム単体でも放てるように改造してある。
『おぉ、こわっ』
「引くなら今のうちです」
『ぬかせ』
私は、王燐に負けて一斉放火を命令する。森の中を何回も轟音が鳴り響き、王燐目掛け砲弾が放たれる。今回用意したのは通常の砲弾のみだか、それでも威力は絶大、シャランは状況を察していたのかセーレンを連れてその場が逃げ去る。
着弾と同時に、とてつもない衝撃と爆撃音が鳴り響く、土煙と黒煙を上げながら見事命中した。
だがおかしい、これほどの砲撃にも関わらず周囲の兵士達が武器を構えながら微動だにしない。
その理由は、すぐに理解させられた。
「なっ、」
煙が晴れた中には、巨大な土壁が出来ていた。それも、
その土壁が崩れると、中から無傷の王燐達が現れる。
『すごいな、冷や汗をかいたぜ』
「無傷…ですか」
『すごいだろ?このチビと杖のおかげだよ』
『チビって言うなっすぅぅぅ〜』
特に変わり映えのしない杖に見えるが。
『分んねぇか?おい、あれやれ』
『あいよ』
そういうと隣にいた大きな盾を構えた男が、盾をこちらに迎えて構え始める、すると、
「すごい武器にはしゃいでる子供ですか?」
杖も盾も変わり映えのない普通の武器に見える、まぁ、これか聞いた話で人族が作り出した術式を使う為の武器なのだろうか。
杖の先端と、縦の真ん中に宝石のような物が埋め込まれていた、あれが奪い取られた魔心だろう。
私たちからしたら、悍ましい物ではあるが。
『くっくくくく……』
「なんですか?」
『はっはははははっ、本当間抜けだな』
「急になんですか?」
『
こいつは今何を言った、仲間の魔心だと。考えたくもない、いやその可能性はある。まさか…。
「おい、まさか…」
『ようやく気づいたか?、あの日死んだお仲間から抜き取らせて貰ったよ』
感情が湧き出てこないとはこの事だろうか、冷静に現状を理解する事しかできない。
悔しいはずなのに、怒ってもいいはずなのに。
ただ、あいつを殺したいと、その事だけが頭に浮かぶ。
「なんて事をしてくれたんだ」
『お前らだって沢山殺したんだろう?同じだよな?』
同じなわけない、あいつらと同じわわけが。
『帰ってこなかったぜ?俺らの仲間は』
これ以上喋るな。
『返してくれよ〜僕の仲間たちを〜ってか!?』
「殺して ヤル ]
『あぁ?、やれるもんならやってみろよ』
私の意識が底のない海へと沈んでいく感覚、どこまでも深く深く、ただ今だけはこの感覚が心地良いと感じる。
そうか、ノイズ…君なのか。
[ フフフッ ヒサビサダネ ヒサシブリ ]
私はこのまま沈み続けるのだろうか、いや、このまま上がれなくてもいいか、全てを壊してやろうか。
ノイズに任せてこの身が壊れゆくまで。
どの道、そう長くはもたなかったのだから。
最後ぐらいは足掻いてみようか。
サクラや、シャラン、セーレンには迷惑をかける事にはなるかもしれないが許して欲しい。
さぁ、殺ってくれ…ノイズ。
[ イイダロウ ツキアオウカ ]
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