【第35話】素材採取
私たちは、最初に沼の森へと向かっていた。
ここは、大峰魔山の西側にある森で、読んで字の如く、沼地が広がっていた。
そこに沼地に自生する、特殊な木々が生えている。
なんとも、不思議な光景が広がっている。
ここを歩くだけでも大変そうだ。
沼地に足を取られ、木々や、剥き出しの根が真っ直ぐ歩けなくしている。
そんな森を私は、サルーンに抱えられていた。
かなりの重量があるはずだが、軽々と持ち上げる。
お姫様抱っこなことは黙っておこう。
ここでのお目当ては
そして、
その獲物を探すのに、私の[
ここでは何の問題もなく獲物を狩り、素材を回収。
道中、ファーネが沼にはまり身動きが取れなくなるなどのトラブルはあったが無事に完了。
次は大峰魔山に向かう。
「うへぇ〜沼が気持ち悪いっす」
「はははははっ、綺麗にはまったもんね!」
「あんなとこよく歩けたっすね」
「まぁね、私たちは自然の中で生きているから、アスレチックみたいなもんよ!」
「あすれちっく?」
「うーん……訓練場?遊び場?みたいなもんね」
「へぇーっ、流石っすね!」
そんな話しをしながら、森の中を駆けていく。
目の前には大峰魔山が迫っていた。
今回は麓の付近にいる魔物を狩るそうだ。
狙うは一つ…
「ジェリープランツってなんすか?」
「うーん…そうね、植物の蔓が生えていて、それを操りながら攻撃してくるって感じかな」
「あんまりよく分かんないっすね」
「見たらわかるわよ!」
正直、私もよく分からなかった。
蔦が生えてくねくねしてるやつを探して。
言われたのが、これだけだから。
辺りを警戒しながら、麓の周りを歩き続ける。
それらしい気配は今のところない。
あるのは、勢い飛んでくる蔦のような…
気づいた時には私は蔓に捕まっていた。
おかしい、センサーに引っ掛からなかった。
迫ってくるまで、何も分からなかった。
そのまま私は勢いよく、上へと持ち上げられる。
このまま振り下ろされたらまずい。
だが、即座にファーネが蔓を切断。
サルーンは、落ちてくる私を抱き抱えてくれる。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございますれ」
「大変っす!シャランさんが蔓の出て来た、奥の方に走っていったっす!」
「サルーン、すぐに追いかけましょう」
「あぁ、いくぞ!」
そうして私たちはシャランを追いかける。
木々を抜け、その先にはシャランが既に交戦を始めていた。
「シャラン様!ご無事ですか!」
「サルーン!あなたは、ナディの側に!」
「うぉーっ!僕も行くっすよ!」
目の前にいる奴が、ジェリープラントらしい。
見た目はクラゲのようだが、手足がすべて蔓で出来ているのだろうか。
だが、思っていたよりかなり大きい。
本体らしき体だけで、3mはありそうだ。
そこから無数に蔓を生やしている。
その蔓が、私たち目掛け襲いかかってきた。
数もそうだが、かなり素早く動いている。
私のセンサーを掻い潜ったのも気になるが。
「ファーネ!なるべく蔓を切らないように!」
「そんな無茶な!結構多いっすよ!」
「それでも、この蔓が必要になるから!」
「なんとか頑張るっす」
そこからは、なるべく蔓を切らないように躱した。
当たりそうになった蔓は、大剣の腹で捌く。
そうして、徐々に本体へと近づいていく。
シャランも遠くから、土?の矢を放っている。
鉉を引くと、そこに土の矢らしきものを形成。
そのまま、本体目掛け放っている。
だが、致命傷とはなりえない。
当たってはいるが、深くは刺さり込まない。
「ファーネ!どれぐらい稼げる!?」
「えぇ!?急にっすね!…3分なら!」
「十分、私は集中するから頼んだよ!」
「げぇっ、やっぱりっすか……任せろっすよ…」
ファーネは大剣を地面に突き刺す。
前に見た
深呼吸をし、体を整え始める。
すると異変を感じたのか、全ての蔓がファーネめがけて集中し始めた。
[
そう唱えると、迫る蔓を全て叩き落とす。
「不動にして、絶対の大地…僕は倒れないっすよ」
そうして、迫る蔓を全て弾き返していく。
決して、その場から動く事なく。
取りこぼして、体に当たっても微動だにしない。
まさに大地に固定されたかのように。
その場で、不動を築きあげている。
その間にシャランが準備を始めていた。
力をため、弓の中に土が集まっていく。
それは鋭い一本の矢を作り上げる。
先ほどのゴツゴツした矢とは違い、表面が滑らか何陶器のような質感をしていた。
長さも1mはありそうな、大きさになる。
その矢を引き、限界まで引き切る。
「シャランさーん!まだっすかー!?」
ファーネも限界らしい。
少しだけ、体がふらついてきている。
蔓の猛攻が止むことなく、浴びせられる。
こちらにも音が伝わるほどの衝撃だ。
「待たせたね、これでお終い」
シャランから放たれる矢は、ジェリープラントを貫く。
まるで大砲のような音と、放たれた衝撃が響き渡る。
貫いた矢は、後ろの岩を貫通し、地面に刺さる。
そして、矢は崩れていく。
「ふぅーっ、ファーネ大丈夫ー?」
「なんとか、大丈夫っす〜!」
ジェリープラントは、その一撃で死んだのか。
激しい地鳴りを起こしながら倒れていた。
「いやーっ、危なかったねー?」
「シャラン様!勝手に先に行かないでと!」
「あー、はいはい…わかったわかった」
「しっかりと、セーレン王に報告しますから」
「それは無しでしょ!?」
それを見ていたファーネが笑い声を上げていた。
これでひとまずは、素材が揃ったのだろう。
これらを持って帰るのは一苦労だが…
そうして、なんとか持ち帰るのだが。
帰り道にタルトーとクベアと合流した。
こちらを見るや、クベアが駆け寄って来た。
必死に手伝うと叫びながら、こっちを見ている。
その眼差しは救いを求める者だった。
今日も、かなり過酷な訓練だったのだろう。
遠くのタルトーが寂しそうにはしている。
それを横目にしながら、手助けを懇願している。
ファーネは全てを察したのか、荷物を持たせる。
この時のクベアの顔は、後でコハクにも見せよう。
そう思いながら、静かに録画を回す。
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