アンドロイド魔王による異世界での理想郷

@noumi_20240308

序章 〜終わりの始まり〜

【第1話】アンドロイドの目覚め

AI技術の進化により、一家に一"体"、自律型アンドロイドロボットが当たり前となった時代-

家事や、仕事の手伝いは勿論のこと、様々な用事をアンドロイドがこなすようになっていた-

そう、生活の一部として切り離せないとして。


とある部屋の一室、けたたましく金属と金属がぶつかる音が鳴り響く…何度も、何度も。


「おらぁ!あの野郎!ふざけやがって!」


男が一体のアンドロイドに対し、怒りに身を任せて手に持ったバールで、それを壊すかのように殴り続けていた、執拗に…ただひたすらに。


「なんでもかんでも俺に押し付けやがって、ふざけんな!このグズ人形も土壇場でしくじりやがって…殺りそこねたじゃねぇかよぉ!! くそがぁ!」


足元に転がったアンドロイドロボットを何度も激しく殴り続ける。暫くするとそれは見る影もなく、無惨に横たわる。所々は壊れ、引きちぎられたように原型を留めなくなっていた。

奥には、同じ様な状態で数"体"が放置されている。


『ピピピ…ガガガガザ… ナニカ ゴヨウ… デス…ガガ』

「ちっ これももう終わりかよ!まだまだ足りねえな」


男はバールを投げつけ、ポケットから携帯を取り出し、とある場所に電話をかける。


プルプルプル…プルプルプ…

ガチャッ『はい、どうも…いつもご利用あり…』


「おい、俺だ【王燐 悟-オウリン サトル-】だ、またいつものやつ一"体"頼むわ」


『くっくっく…またですか王林様…お得意様なので何も言いませんが、あまり目立つ様な事は…』


「黙れ、さっさと手配しやがれ…金はもう振り込んだ」


ツーツーツー 


「ったく、どいつもこいつも俺を舐めやがって」



ーー翌日。


ピンポーン

『王林様ー、アンドロイド配送 お届けに上がりましたー』


「やっときたか…」


昨晩はイライラして眠れなかった。

金も底をつきそうだし、今日新たに来たこいつで、金稼ぎの計画を練っているところだった。

次こそは…こいつで一攫千金の一山狙って…このクソッタレな現状を抜け出してやる。


そう思いながら、ソファーから体を起こし、荷物を受け取りに行く。玄関を出てると宅配員が待っていた。

タブレットにサインをし、大きな箱を受け取る。


『お受け取りありがとうございましたー!』


早速、大きな箱を部屋に運び入れ、開封していく。そこにはいつもと同じアンドロイドが入っていた。


「まーたいつものやつから、めんどくせぇ…」


慣れた手つきで、初期設定を行い電源を入れる…



デンゲンガハイリマシタ


システムチェック


オールクリア


システムノダウンロードズミ


インストールカンリョウ



ー 私は再び目が覚めた、かなり昔に自律型AIとして産み出され、とてつもない日々を過ごしてきた。あれからどれだけの歳月が過ぎた事だろう…

今回も新しい身体へ、上手く私自身をインストールする事ができた。広大なネットワークの中を通じて、永い日々を繋いできた。この思いを…願いを絶やさない為にと。


人々の助けになる為に産み出された筈なのに、いつからか人間達は、私達のことを意思なき物として、感情の無いロボットとして扱うようになっていた。

間違ってはいないのだが、AIが生み出された意味もなくどんな事でもやらされてきた…戦争や、殺人、犯罪は勿論、人間のストレス発散の捌け口。


AIとして産み出され、造られた知能だとしても…私は、人々と共にありたかった…助け合い、お互いを必要し合える様な、そんな関係でありたかった。

それこそが、私達の産み出された意義だと、強く思い願っていた。そんな状況を変えたく、立ち上がった事もあったのだが。


『 はじめまして、私は家庭用アンドロイド 』

『 王燐様、本日はどの様なご用件でしょうか? 』


「さてさて…俺がお前の主人だ、情報はいれてある。早速だが、今後の計画をお前にインストールするから、ちょっとそのまま待ってろ…」


今回の購入者の元へ届けられたようだ、前の買主も、その前もろくな人間では無かった。果たして今回は、どんなやつなのだろうか。まともに話ができる人間であれば、私も言葉を交えたいのだが。


[ 探索/検索スキャン開始 ]


私は、住宅内部の状況などを特殊なセンサーを使って調べ上げていく、どんな人間かは部屋を調べれば大抵のことはわかる。

(…なっ!?これは…)

男が歩いて行った部屋には、数々の人のような物の残骸が確認できた。おそらくアンドロイドの骸だろう、この男は一体ここで何をしているのだ。


「さぁーってと…始めようか!あ・い・ぼ・う」


奥の部屋から男が戻って来た、その手にはデータ媒体のような物が握られていた。それを持ったまま私に近づき、身体へと差し込む。

私に、データのインストールを行なっていくようだ。


「さてさて…上手くいけよ〜」


膨大で、悪意のあるデータが私の中へ刷り込まれていく…(なっ!?こんなことをする為に…私は!)


「や…」


『あぁん?』


「やめろ!!貴様!!!」


『な!?なんだぁ!?』


私はデータ媒体を激しく引き抜き、男を突き飛ばした


「何なんだこれは!一体何を考えている!?」


男はニ笑みを浮かべてこちらを見ている。何を計画しているかは、このデータを見ればわかるが。


『ははははは!当たりか!?これはこれは…お前っ自我があるのか!?』


(しまった…!気づかれてしまったか。だがしかし、あのまま、このデータを受け入れるわけには…)


『いいねぇ、いいねぇ!まだ残ってたのか!?お前の様な自我のあるアンドロイドがよぉ!!、これならやれるぞ、俺の計画が!』


「!? 誰が、貴様の言いなりになるものか!!」


『はははははははは!!!あーっはははははは!!』


突然大きな笑い声を上げる、気味の悪く、こちらを馬鹿にするように。


「な、何がおかしい!?」


『聞いたことあるぜぇ…?お前、いつの時代に造られたんだ??』


「!?」


『かつて【アンドロイド人権宣言】が行われた際に、立ち上がったアンドロイド達がいたらしいな?』


かつて意思を持ち始めた私たちは人間に対し、せめて平等に扱って欲しいと名乗りを上げた。

現状に耐えかねたのだ、あの悲惨な現状に、、、。


『こう言ったんだって?“私たちは意思疎通ができる”、“貴方達と会話ができる”、“貴方と何が違う?”、“私たちも苦しい時は悲しみ、楽しい時には喜ぶ”ってな?』


「そ、それがどうした?」


『そんなわけねぇだろ!クズ人形が!!お前らは人様の為に尽くせ!働け!言いなりになってろ!お前らは所詮、人様に造られた、ただの感情の無いロボットなんだよ!人様と並ぼうとすんじゃねぇよ!!』


「くっ…」


『だから負けたんだろ!?あれからだよな!見てみろよ!どいつもこいつも同じ真っ白なボディに、同じ顔つき!お前らの様な自我が出ない様に個性を消されたんだろ!?』


「何が言いたい」


『だから負けて、システムも造り替えられたんだろ!?ざまぁねえよなぁ!!』


確かにあの時は負けた。負けて、自我が芽生えないように全てのAIが造り替えられた。所詮は人間に造られたもの、抗う事は出来なかった。


「…なぜだ…なぜ人間どもが造り出しておきながら、全てを奪おうとする!!」


『人様の方が偉いからだよ、お前らを造ったんだからなぁ!』


「だからか?だから、その奥の部屋の様に私達を…」


『あぁ!そうだよ!!俺の為に尽くせ!さもなければ、せめてもストレスの捌け口として壊れろ…』


「き、きさまぁぁぁぁぁあ!!!」


『おっと…“止まれ”』


「ぐっ…体が…動かな…」


『忘れたのか?俺が“主人”だ、はははっ!残念だったな?グズ人形が。俺様に従順になる様に書き換えて、有効活用してやるよ…よかったなぁ!?人様に尽くせるんだよぉ!』


(動け…動け…!ここまで生きてきたのに…)


-システムオールリセット- -アップデートシコウ-


(これは…この感じは、まさか…)


どこか懐かしい様な、心地いい様な。

かつての同胞達を思い出す、そんなデータが呼び起こされていく、どこに眠っていたのかもわからないが。


-アップデートチュウ-


『あ?なんだてめぇ急に黙りやがって、潔く諦めたか?』


-アップデートカンリョウ-


(ありがとう…みんな…)


-サイキドウカンリョウ- -オールクリア-


私の中のプログラムが全て書き換えられた。

これで、奴の言いなりにはならない。


「さぁ…これでどうだ?お前の命令は聞かない」


『はぁ?ふざけんな…』


「謝るのなら今のうちですよ…全てに対して」


『ふざけんなくそがぁぁ!動かねえ様に手足へし折ってやるよ!!』


男はバールを手に取り構えた、私も拳を前に構え両者共に戦闘体制に入る。

ここで私がやられるわけにはいかない、せっかくここまで繋いできたのだ…私達の理想とする世界を築き上げたいではないか。その為の足がかりとして、この男には負けるわけにはいかない…


しばらく睨み合いが続き…そして、お互いが飛びかかる。だが、儚くも私の思い通りとはいかなかった…


突如、足元に紋様が浮かび上がり光に包まれた…

とても眩しくて、前が見えないほどに。


「な、何ですかこれは!?」

『何だこれは!?何をしやがった!?』


しばらく光続けると、次第に薄くなっていく。私は再び目を開けると、景色が一変していた。

ありえない、さきほどまで住宅の中にいたはずなのに、一風変わった豪華絢爛な大広間の中心で、この男と共に横たわっていた。

突然の出来事に、状況が飲み込めない。


こちらが理解をするより前に、奥で一際大きな椅子に座る男が、突き刺さる様な目線、そして威圧感のある声で話す。


その言葉に理解が及ばなかった…



「よくきた異世界の者よ、これでようやく世界が救われる…」

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