ジャンクでも、キレイになりたい!

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

第1話 ジャンク美人部

「モモちゃん、パーツ決まったかしら?」


 私としーちゃんは、擬態のジャンクパーツをかごに詰めていく。

 

「えっと、右手の中指とぉ、左足の小指と、眉毛」


 まるで自作PCのジャンク品みたく、擬態のパーツが小さなカゴに入っている。


「ワタシは、鼻を手に入れたわ!」


「しーちゃん、また顔ばっかり? この前も、耳とか変えてなかったっけ?」


「顔つっても、まだ改良の余地があると思うのよね」

 

 しーちゃんは黒髪なのに、目が青い。

 ハーフではなく、れっきとした純正日本人だ。

 ジャンクパーツを、目にはめ込んでいるのだ。



 私たちジャンク部は、ジャンクパーツだけで美しくなれるかを試していた。

 整形に関して偏見のある昭和世代からしたら、「親からもらった身体をなんて罰当たりな」、って言われそうだけど。


 親からもらった身体は、ちゃんと医療機関で専用の液体に浸して保存している。 

擬態技術が発達したため、元の人間の肉体は不要になると思われていた。

 しかし、なんらかのトラブルが起きる可能性もある。

 そのため細胞だけは、一応医療機関が保管しておいてくれるのだ。必要になったら培養して、元の「パーツ」に戻すだけ。

 

 ましてしーちゃん……純天堂ジュンテンドー 詩麻シーマの家は、整形外科だ。

 キレイになるため、身体を作り変えることに抵抗がない。



「また、ナンパされてたよね?」

 

「そうなの。でもこの店に入ったら、寄り付かなくなったわ」


 このジャンクパーツ屋は行きつけの店なのだが、今ではすっかりナンパ避けの場所となっている。

 

 ただでさえキレイなのだが、まだ自分の身体を改造していく。

 美しく生まれてきたのに、しーちゃんはジャンクの方にしか興味がない。


 ジャンクには、ジャンクの可能性があるはずなのだ。

 私たちはそのジャンクを自分の身体に付け替えて、美しくなる。


「せんせー。これ部費で落ちるよね?」


 わたしは、肩に下げているカバンに呼びかける。


 カバンの中から、ネコがひょこっと顔を出す。


「うむ。それくらいの値段なら、構わないな」


 ネコが言葉を話す。

 

 彼はれっきとした、ウチの顧問だ。「ネコの顧問」だから、私たちは「ネコモン」と呼んでいる。

 電子工学を担当する彼は、ケモナーがたたって自分をネコに整形してしまった。脳をネコ型の自作アンドロイドに移植したのである。

 女子高生二人に挟まれているため、もし人間なら「百合に挟まれる男」だ。

 しかし、彼はネコにしか興味がない。 

 

「さすが、我が校は太っ腹」


「いや針宮ハリミヤ、ちゃんとバイトもしてもらうからな。あんなバイトだって、成績がいいから大目に見ているだけだぞ。ちゃんと勉強もせんか。暗記しただけでは、応用問題は解けんのだぞ」


「わかってるっての」

 

 人間三体分のジャンクを、購入した。

 それでも、七千円は行かない。

 

 これぞジャンク。不必要と認定された、欠陥品の価値である。

 余分めに買っているのは、実際に取り付けてみないと具合がわからないから。


 スーパーモデルの足を購入して、取り付けた瞬間ペシャンコにしたデブのセレブもいる。

擬態にだって、生身との相性があるのだ。


「よし、持って帰ろう」

 

 生身の人間三体分のパーツでも、私たちなら軽々と持ち運べる。「運搬プログラム」を体内に取り込んでいるためだ。見た目はJKだが、フォークリフトほどの重量耐性を持つ。


 このプログラムを搭載した腕を持つせいか、私には殿方からお声がかからない。

 それとも、元々がガサツな干物女だからかもしれんが。

 

 まあ、男なんていらんけど。

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