鳥籠の中の死神

ツバキ丸

第一話:呪いの子

雷苑らいえんには近寄るな。』

何度も聞いた、そんな言葉。


軽蔑の眼差しと共に、俺の身には拳が降り注ぐ。

俺の精神が壊れない程度に打ち付けるその雨は、まさに悪魔の様だった。


「はぁ......」

冷たい檻の中で、呪いに侵されている俺はため息をつく。

逃げ出すことなんて、とっくに諦めた。

だって逃げ出しても、その先に待っているのは絶望だから。


「」

でも.....


「.........っ...」

それでも、恐怖は消えない。


「........。」

何となく外が明るくなると、あの男達は現れる。

ただ俺に暴力を振るい、帰っていく。

俺の事を殴っている時のアイツらは、まるで生贄を貪る悪魔の様だった。


「........痛い。」

アイツらに殴られた痕は、いつもパンパンに腫れて赤くなる。

毎度の如く、別のことを考えて痛みを和らげる。


「ひぃ、ふう、みい......」

俺は牢の中で、“誕生日呪いの日”に殺してしまった人の数を数える。


「七、八......」

俺の身体は呪われている。

五つの時に、誕生日になると“その年に一番大切だった人”を殺すという呪いに掛かってしまったから。

自我もなく、ただ獣のように“大切な人ターゲット”目掛けて牙をむける。

そんな、バケモノへと変貌してしまった。



『人殺し』

周りの奴らはそう言って、俺に石を投げつけた。

『俺たちに近づくな』

周りの奴らはそう言って、俺に憎悪の感情を向けた。


「何で、俺だけがこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ........」

怖かった。何時、その息の根を止められるかと思ってビクビクしていた。


「何で......こうなるんだろうな。」


........いつも俺は、何を思って殺しているんだろう。


人を殺している時のことを、俺は何も覚えていない。

というより、知らないと言った方が正しいかもしれない。

気がついたら血に塗れたナイフを持って、ぐちゃぐちゃな肉塊の前に立っている。

本当に、ただそれだけ。


........いつもの様にくだらない事を考えて、俺は精神を保とうとしていた。


ギィ...........


突如、地下牢の入り口の扉が開く音がした。

ちょっと前に来たし、あの男達ではない。

此処には俺しか居ないし、こんな所に来たがる一般人なんて居ないだろう。


「........誰だ。」


コツ、コツ、コツ........

だんだんと、足音が大きくなっていく。

........来る。精一杯警戒して、入り口の方を見た。


そこには、俺と同い年くらいの三つ編みをした少女が佇んで居た。

「........貴方、だぁれ?」


俺の事を知らない奴はこの街には居ない。

だからこそ、忘れていた。


「お前こそ、誰なんだよ。」



彼女と出会ってしまった事自体が、禁忌タブーだと言う事に。

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