まな裏にふる名残り雪なら

音崎 琳

一日目

密やかに旅のはじまり祝うパフェ


背もたれの倒し方教わったよね


白梅のそらより零れくる都


踏切の向こうに遮られながらすこし見つかる十五年前


ここにいないひとを見ているひとでなし菜の花はもう咲いてましたか


みささぎの水鳥の立つ濠ほとりはなしたことはかえつてこない


君がふと口にしてからゆきかかるたびに綻ぶ三色すみれ


外洋へ漕ぎ出す船の遠景に丹塗りの柱 紛れるポスト


歌一輪いれておくるねハーブティ


離陸用ルームキーなら挿しました


くぐりぬけたかがみのなかの蔦模様思い出せなくなるんだろうな


バスタオル見えない春をくるんでしまう


あわ雪のふとんでねむるメロンパン憂いなき夜の魔法をかける


写真にもはがきにも残らないまましずかに更けてゆく夜のこと


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