ビギナー賞 オレンジ

『オレンジ』

心沢 みうら様の作品

https://kakuyomu.jp/works/16818093075878872736




前置き

私がまともな文章や仕込みをできるようになるのに結構時間がかかったので、できているのはすごい(小並感)。


短編というのは切れ味を出すのが難しいのですが、この方は二作目らしくその切れ味を……待ってください――二作目?



1 タイトル&キャッチコピー

タイトル:おシンプル

『オレンジ』


単語だけだと『白い帽子』とか思い出しますね。



キャッチコピー:今風

『私が好きな女は、ファッション同性愛者だ。』

ファッション同性愛者、というより両性愛者という説明が最初されるのですが、主人公の心情を考えるとこのキャッチコピーで正解と言えるでしょう。穿ちすぎですかもしれませんが、読了後には憎しみがにじみ出てるようにも……


え? 本当にビギナー賞?



2 あらすじ

あらすじ:無駄なし

物語に興味をもたせようとする一文。シンプルで良いですね。



3 ストーリー

ストーリー:時流

うっ、時流を。時流を感じる。

少数派になろうとして霊感がある設定じゃなくて同性愛者というのも、韓国グッズのショップに需要があるのも……いや、私が縁なかっただけかもしれない(クソオタク)。

グロが好き、霊感がある、同性愛者、まぁ少年少女の抱える特別感がほしいという欲求の現れでしょうな。私は崇高な小説を……あれ、私もしかして成長していない?

冗談はさておき。


とても心情が丁寧に書かれていますね。こういう作品は長くして相手の心情を掘り下げたりするのですが、主人公の心情のみの一点突破。約1900文字で、タイトル、キャッチコピー、副題を全部使い切ってのゴール。


オレンジを食べながら牛乳を飲むと吐瀉物の味がする。この表現を出して回収しきるパワー。


え? これ大賞じゃないんです? ビギナー賞? と思ったら審査員の中で大賞に推していた方もいらっしゃったご様子。


これが大賞でも納得です。



4 キャラ

キャラ:リアル

ただただリアル。主人公の願望と諦めも、相手のファッションぽさも雰囲気が出ていますし、読み終わった後にタイトルとキャッチコピーと副題を読んで意味に気づける良さもあり、主人公の心情のリアルさに膝を打ちます。



5 世界観

世界観:現代

現代が舞台なので特筆することなし。



6 文章

文章:ドロっと。

欲を言えば、冒頭にもう少し説明がほしかったかな、というところ。状況を把握するのにちょっと戸惑う感じ。

ドロドロというほどじゃないにせよ思春期特有の感情や濁り混ざった心情の表現がしっかりできていますので「ドロっと。」です



7 まとめ

短編としての完成度はかなりのもの。ビギナーでこれは私が泣く。

RT企画でこの作品がきたら普通にゆるレビューをお願いするレベル。

望んだものは得られるけれど、望んだ結果を得られないんだろうなという主人公の心情がひしひしと伝わってきますし、なんとなく相手の方も本気で好きになれる相手がいなさそうなのでそれを焦っているというか悩んでいそうな雰囲気があり、嫌悪感を煽るようなファッション同性愛者ではないというのも良い(考えすぎかもしれませんけれど)。


適切に、引き伸ばさず、テーマとキャラを活かしきった賞に選ばれるのも納得の作品。


え? これビギナー?(◯回目)

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