昇らない お日さま (1) お日さまが昇らない!

ここはヴォルノースの森。何処かの世界、何処かの時代に確かにあった森。


大いなる森の上には今、月がぽっかりと浮かんでいます。青く青く、大変きれいな満月です。でもそれももう少しのこと。そろそろ夜が明ける時間です。朝になればこの地に住むあらゆる者たちが目を覚まし、昨日とかわらぬ生活を始めます。


ほら、こう言っている間にも東の空が白んできて、とても明るい太陽が昇って来ま……、あれ? おかしいですね。いえ、気を取りなおして、とても元気のいい太陽が昇って……昇って……来ません!


いやはや、これはどうした事でしょうか。まずはニワトリがおかしいと気がつきました。だって、高らかに鳴こうと思って待っていたのに、いつまでたっても太陽が昇って来ないのですからね。小屋の中で羽根をバタつかせ、異変を飼い主に知らせようとします。


次に気がついたのは、森のフクロウでした。彼らにとっての一日がようやっとおわり、さぁ、楽しい夢でも見ようかな思ったのに、いつまでたっても空が白んでは来ません。もうすぐ朝だと思ったのは自分の勘違いで、こりゃまだ狩りを続けなければいけないのかとため息をつきました。


そして三番目に気がついたのが、ケモノ妖精のフェラデイドンです。体は人間、頭は犬の形をしたこの若者は、朝一番で教会の鐘を鳴らす役目を担っています。


いつものように、けたたましい音の目覚し時計が鳴り、寝ぼけまなこをこすりながらベッドからはい出た彼はおかしいなと思いました。この季節、目覚ましが鳴るころ、表は白んで来ているはずです。しかし窓の外を見るとまだ真っ暗で、いつお化けが出て来たとしても不思議ではありません。


「変だなぁ。目覚ましの時間をかけ間違えたかなぁ」


フェラディドンはお気に入りの真っ赤な目覚し時計を確かめましたが、ちゃんと時刻は合っているようです。途端に彼は気味が悪くてしょうがなくなりました。でも勇気を振り絞って、教会の隣に立っている雑用小屋から外へ出てみました。本当は、下手をすると牧師さまに怒られるのが怖かったからです。

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