亡者の戦車 (1) 吹雪の夜

ここはヴォルノースの南の森。今この地域は、大変な吹雪に見舞われています。というのは、北風に乗ってやって来た雪雲が、すぐそばにあるカクリン山脈にぶつかって、それで雪雲がビックリしてしまい大粒の雪を勢いよくバラまくのですね。この森はヴォルノースの一番南にあるのに、一番雪が降るなんて本当に変な話です。


「パパ、何かお話してよ」


暖炉の火がパチパチとはぜる音を聞きながら、ヒト妖精の男の子ニ―ルがせがみます。


ところがニールのおねだりを耳ざとく聞いていたニールのママは「だめよ、もう寝る時間でしょ」と、せっかくのお楽しみを邪魔しようとしました。


あ、もちろんニ―ルが憎くて言っているわけではありませんよ。ニールは只でさえお寝坊さんなので、夜更かしは健康に良くないとの親心からでありました。


「まぁ、いいじゃないか。最近、仕事で忙しかったから、ニールとも余り話をしていないしさ」


「そうだ、そうだ!」


ニールが可愛いゲンコツを、天井に向かって突き上げます。


「しかたないわねぇ」


男二人の連合軍に押し切られ、ママも渋々承知をしました。


でも、一方的に引き下がるママではありません。


「短いお話を一つだけよ。いい?」


と、しっかりと二人に約束をさせました。


喜んだニールは早速、ソファでくつろいでいるパパの隣にチョコンと座ります。さぁ、今夜はどんなお話をしてくれるのでしょうか。ニールの胸は期待で高鳴ります。


パパはマグカップのココアを一口飲むと、お話を語り出しました。


「これはパパが昔、お前のお爺さんから聞いた話なんだけど……」


その言葉にニールは心の奥で小躍りしす。パパ方のお爺さんはとても愉快な人で、ニールのおうちに来た時は、いつも笑いが絶えないからです。

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