第1章 領地経営編

ある晦日の晩のこと

豊は神仏に厚い信仰を持っている人間だった。

しかし、その信仰はいい加減で、

ある日はたくさん祝詞や御経を上げると思ったら、

ある日は全くしないのだった。


すごくいい加減だったが、

神様仏様もさして悪い加減はなさらなかった。


豊はお金持ちや目上の人や権力者に好かれやすい人間だった。

なぜか分からないが、誰も彼をおいておこうとはしなかった。

一目を置かれる人物だった。


そんな彼はだらしない生活を送っていた。

しかし、神仏はおそらくそんな彼をも許していた。

その生活は所詮、自分に返ってくることだったからだ。


そんなこんなで、

ある辰年の年末のことだった。


30歳にもなって、

豊は「今年のクリスマスプレゼントは宝くじ1等当たりますように」と、

神社に祈るのだった。


まさに他力本願である。


しかし、現実とは幸か不幸か、

その言霊が案外叶ってしまうもので、

しっかりと事前に打ち合わせた通り、

歌番組の前番組を見ていた時に、

吉報が届く。


・・・・・・

おめでとうございます!

宝くじ1等当選しました。

2等ではありません。

1等ですよ!1等!

本当におめでとうございます!

・・・・・・


というような感じのメッセージだった。


豊は天にも昇る気持ちになって、

まるで甘い祝福するかのような空気が部屋中に溢れ、

体の中を祝砲で討ち取られたようなそんな気持ちになっていた。


なんにも言えねーという流行語があったが、

その時の有頂天さといえば、

本当に言葉では表現しがたい喜びだった。

体は武者震いするような喜びが溢れていたが、

頭は思考停止状態になった。


「日頃の生活が良かったためだな。

ナハナハナハナハナハナハハハハッ~」


というような感想しか出ないのであった。

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