第10話 「失望」
いつのまにか寝てたのかと思うくらい昨日の記憶がない。
気がついたら朝になっていた。
窓から差し込んでくる太陽の光が眩しいから目を覚ましてしまった。
寝返って横を見てみると一緒に美緒が寝ている。黙ってれば多分どんな男もいちころになるだろ。透も多分落ちるよな。
それくらい綺麗な顔をしていて少し勿体無いくらいに...
「ん〜...陸...」
どんな夢見てんだか。
てかそうか、別れたってのにその場に流されちゃったなおれ...
「陸、おはよ。
ゆうべはお楽しみでしたね。」
「おい美緒、どこかのRPGで聞いたことのあるセリフをここで言うなよな。」
「いや思いっきり楽しんでたじゃんw
やっぱ相変わらずむっつりだなぁってww」
「う、うるせぇな!男なら大体そんなもんだろ。
どうせ頭ん中でイケメン像でも思い浮かべてたりしながらだったんだろ。透とか。」
「はぁ、相変わらず拗らせてるね陸は。
それじゃ大学でも全然男にモテてないって分かるよほんとに。」
そんな姿で言われたってなんも説得力ないぞ。
でも、やっぱりきれいだ。
その顔や体があれば確かにいろんな男が好きになるよな。
「何ジロジロ見てんのよ、このむっつりがw」
うん、あとはこの性格が治ればより戻してもよかったくらいに。
ーーーーーーー
とりあえずシャワーを借りて汗を流し、着替えて帰る用意をしていたら。
朝ごはんを作れと命令されたから作ることになった。
いつもはほとんど入っていない冷蔵庫の中は案外野菜とか肉とかいろいろ入れてあった。
こいつ、はなからおれにメシを作らせるために買ったんだと思いながら軽く朝食を作る。
とりあえずフレンチトーストと目玉焼き、オニオンスープとトマトを盛り付けたサラダ。
まぁこんな感じ。
そんなに料理は得意な方じゃない、まぁあいつほどじゃないけどな。
「お、美味そうな匂い。やっぱりご飯作らせるなら陸だよねーw」
「お前さー自分のメシくらいそろそろ自分で作れるようになれよな全く」
呆れながらも朝食を完成させて食べていく。
案外上手くできたなと少し満足げになっていく。
「んー!美味いなー陸の作ったご飯!
やっぱり作ってもらったのは正解だったなーw」
「食ってる時の顔が満足な顔しててみてるこっちが恥ずかしくなるんだけど」
「まぁいいじゃんいいじゃん!
ところで陸さんや、今日学校でしょ?終わったらどっか出かけましょうやw」
「嫌だわ、2人でいるとこだれかに見られたらそれこそいろいろと噂されるだろ
透に見られんのもあれだし、美緒だって通ってる大学にまで広まんのやだろ」
「あーそれは確かに嫌かもw」
「おい」
もう夫婦漫才みたいになってんじゃねぇか。
やめろ、もう終わった関係なのに引きずるつもりはないぞ。
ーーーーーーーーー
こうして支度をしておれたちは家を出た。
とりあえずやっと解放されると思うと気が楽になる。
「はぁ、やっとのどかな日常が戻ってくると思うとほっとするよ」
「よく言うよ、昨日はあんなに私のこと求めちゃってたくせに。もしや欲求不満だったなw」
「おい、その言い方は語弊があんだろ。」
相変わらずボケてるなこいつと思いながらも駅の方へ向かっていく。
歩いて10分くらいで昨日再会したコンビニまでたどり着いた。
「じゃあ陸、私待ち合わせしてるからここで解散ねw」
「は?お前待ち合わせしてるなんて初めて聞いたんだけど」
「んー?今思いついた感じ?w」
「あーそうやって誤魔化す感じか」
もう早く解散しようぜほんとに。
名残惜しいのかしつこく漫才みたいになっていく。いやおれが無視すればいいだけなんだけどさすがにそれは可哀想だ。
「あれ、陸くん?」
なんだか聞いたことがある声が聞こえてきたから振り返ってみると
そこにはドン引きした顔で見ている未紗さんがいた。それと同時におれもなんだか悪寒がし始めてきた。
「あ、昨日見ためっちゃ可愛い子だ!」
おい美緒、やめてくれよ今ここでそんなネタバラシみたいに言うの。
ほんとにマズイ状況になっちゃったじゃねぇか。
てか2人は最寄り一緒だったのかと初めて知った...
そんなのも束の間、とっさに美緒がおれに聞いてくる。
「陸この子と知り合いなの?すみにおけないね〜w」
「大学が一緒なだけだわ、おれも驚いてるわ。
未紗さん最寄りここだったんだ?」
未紗さんはドン引きした顔で答えてく。
「そうだよ、陸くんどうしてここにいるのかなって思ってたけど...
そうなんだ、陸くん彼女いたんだ。私と話してるときより全然仲良さげだから...」
ちょっと待って未紗さん!違うんだ本当にと言おうとした矢先に
「そうー!陸の彼女の杉浦美緒でーす!いつもうちの陸がお世話になってますw
昨日はごめんね、うちの陸を待っててちょっとイライラしてたから関係ないあなたにまで八つ当たりしちゃって」
「大丈夫ですよ気にしないでください。
私は何も見てないですほんとに。だからもういいですよね」
未紗さん目が死んでる...
ヤバい、大学中に広まったら大変だ。
美緒置いて逃げるしかない。
「じゃあ美緒、待ち合わせしてんだろ?
そしたらおれはそのままもう大学行くから、なんかあったらまた連絡してくれ、それじゃ!」
そう早口で言って早歩きでその場を去った。
「いいの?陸のこと追っかけなくて?
てか連絡先交換しようよ、なにかの縁だしw
名前教えてよ」
「水無月未紗です。一応陸くんのこと知ってるだろうから何かあれば聞きますね...
あと、陸くんのこともうからかわないでください。それじゃ」
あとから朱音さんに聞いた話じゃ未紗さんがあそこまで塩対応するのはほんとに珍しいことだと知った。
そんなに美緒のこと嫌いになったのかと驚いた。
「.....ふーんw
なるほどね〜...w」
ーーーーーーー
駅に着いてとりあえず自販機で飲み物を買って落ち着こうとした。
さすがにこんな早くに未紗さんに美緒のこと知られるとは思わなかったから自分でもびっくりしてしまった。
そして程なくして未紗さんもホームに着いておれに近づいてきた。
「ねぇ陸くん、なんで嘘ついたの?
彼女いないって言ってたよね?」
ヤバい、これほんとにブチ切れてるやつだ。
「いや違うんだよ未紗さん、おれとあいつはもう別れてるし。あいつが勝手に彼氏って言ってるだけで...」
「じゃなんで陸くんは元カノの家に行ったの?
それってまだ美緒さんに気があるってことだよね?
別れてるんだったら呼ばれたからってわざわざ直接会いに行ったりしないよね?」
やばいやばい、未紗さんってキレるとこうなるんだ。
「昔からそうなんだよあいつは、自分の都合の良い時に呼び出していろいろと愚痴とか自慢話とか延々と続けるようなタイプで...」
「都合の良い?
都合の良いのは陸くんの方でしょ?
セフレのように都合よく会って家に行ってヤって自分の欲求解消してるだけじゃん。
少なくても陸くんが同意してる時点で関係として成立してるじゃん。」
こんなに饒舌になるんだキレてると...
「別に私がいないところで何しようが勝手ですよ、ただの大学の友達だもんね。
私の気持ち何も知らないくせに身勝手な行動するんだなってわかったよ。
陸くんがこんなことするような人だとは思わなかった。」
何も知らないくせに...
いやそれは
「何も知らないくせにだって?
それはこっちのセリフだよ、おれと美緒の関係何も知らねぇくせにそんなこと言われる筋合いねぇよ。外野が口出ししてくんじゃねぇ。」
あれ、おれも釣られてキレてるよなこれ。
一瞬の間に冷静になって思い返してみるとヤバいこと言ってると自覚した。
電車が来て、最後に未紗さんが
「そう、わかった。
陸くんはそういう人だったんだね。
マジで失望した。もう話しかけないで。じゃあね。」
「違う!おれは...」
そう言い訳をする前に電車のドアが閉まり、走っていった。
なんでこんなことになるんだよ...
そう思いながら立ち尽くしていた。
そして学校に初めて遅刻して向かうことになった。
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