第18話
そして、太陽と交代して月や星が周りを照らす時間となった。
配置としては子どもであるガーナは寝室で寝かせ、他の船員達の場所は、メソドは貴重品の前、ノイとサナは甲板、船長は船内にいた。
「手合わせした感じだと、正直ガーナに見てもらった方が良かったんじゃねぇか?」
戦闘になる可能性を考えて準備をしながらノイはサナに話しかける。
「まあ、そうね。」
「あいつもぼやいているが、いつまでも子ども扱いしない方が…。」
「それ、人のこと言えないわよ。」
苦笑交じりに話すサナを見て、ノイは眉間に皺を寄せた。
「あ?」
「お菓子買い過ぎるなって言うくせにいざお菓子がなくなると、内緒でお菓子作ってあげるのに。」
「いいじゃねぇか、そんぐらい。」
クスクスと笑ってから、でもとサナは話の内容をもとに戻す。
「確かに、あの怪盗は奇妙な術ができるみたいだったから、そういうことに一番詳しいのはガーナちゃんね。」
「まあな。」
「でも、どれだけ知識を持っていたとしても、体は子どもだから、労わってあげなきゃって船長も言っているし。」
そこで船長が話題に入り、そういえばとノイは問う。
「…あの人の配置、間違っていねぇか?」
「あ、やっぱりそう思う?」
そう思うのも仕方がないと、サナはノイを見た。
「わたしもそう思う。」
「自分から言ったのか?」
「ええ、別にサボりたいからって訳じゃないみたいだったけど。」
「いや、寝てるだ」
そこまで言いかけて、ノイとサナは口を閉じた。
周りが霧で見えにくくなってきたのだ。
「…今日は雨とか降らなかったよな?」
「ええ、快晴といっていい程良い天気でした。」
一気にリラックスしていた雰囲気が緊迫したものへ移行する。
「…来るぞ。」
「はい。」
すぐさま、周りに変化が起き、濃い霧の中から人影が浮き出てきた。
「こんばんは。」
「こんばんは。」
「…礼儀正しく挨拶返すんじゃねぇ。」
言葉こそ穏やかなものだが、そこの空間が一気に緊張に包まれる。
「予告はしたぞ?」
「えっと、“船の宝を奪う”…でしたっけ?」
「言っとくが、うちの船にそんな大層な物ないぞ。」
未だに霧に包まれ、輪郭がはっきりしない相手だが声を頼りに間合いをつめた。
「…宝というのは、何も金銭的に価値があるものだけではないだろう。」
低い声でゆっくりと相手は話す。
「確かにあの領主の家から盗んだ物はそういったものが多かった、しかし、お前達の船には違う意味で価値のある物が多いだろう?」
「…それは」
言葉の真意を問おうとサナが口を開いた時。
大きな音とともに船内への入り口が破壊された。
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