幕間 黒の怨念と死の呪い

第30話 魔法使いの復讐

 邪悪な黒魔法使いの集団ファントムローゼ。周辺のコロニーを巻き込む、残虐でエゴにまみれた大規模魔法実験を計画したゴロツキ魔法使い達は、不可視の獣の活躍によって組織ごと滅ぼされた。


 標的にされていたコロニーの人間たちはネベルのおかげでその命を救われたが、未来永劫その真実を知る事は無い。救世主の存在が明るみにされる事はなく、人々の心にはさらなるミュートリアンへの恐怖と猜疑心のみが残った。


 だが一方で、ファントムローゼの頭領ロゼ・ベルギウスがネベル・ウェーバーによって殺されたという情報を、事件から数か月後に知り得た者がいた。


「ピギー!!!ピギー!!! おのれっ 不可視の獣め、許さんぞ! よくも兄上様をぶち殺してくれおったな!!! 兄上様は、僕様なんかとちがってとっても賢いんだ。どこぞのダイバーなんかにやられるわけがない。…………きっと兄上様は、卑怯な手を使って殺されちゃったんだぁっ! ピギー!!! 許せん!!!」


 とある洞窟にある秘密の部屋の中で、使い魔からの報せを受け取ったロゼの弟アーバン・ベルギウスは、兄の訃報を知るとまるで子供のように地団太を踏みながら泣きわめいた。


 そのまま彼は三日三晩、洞窟中に聞こえる声で泣き続けた。

 親しい兄の名と、憎い仇であるネベルの名を叫びながら。


「絶対殺してやるうー!!! どんな手段を使ってもなっ!!!」


 そうしてすべての涙が枯れつくすと、アーバン・ベルギウスは洞窟の部屋にある男を呼び出した。その男はとても大きな鎖鎌を持っていた。


「……お呼びでしょうか」


 男は殺し屋だった。アーバン・ベルギウスは男に仕事を依頼した。ネベル・ウェーバーの抹殺の依頼だ。


「そんなに泣かんでくだせぇ。オラに任してくんさい。あんたの兄さを殺した悪党は、オラが倒してみんますので」


「おお、頼もしいぞ! 北大陸最強の豪傑よ」

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