吾輩は寺場糸である

寺場 糸@第29回スニーカー大賞【特別賞

2024年3月29日 宴のあと

 吾輩は寺場糸である。

 名前はあるが職はない。


 先日、頑張って書いた『僕はライトノベルの主人公』というメタフィクション・コメディで、第29回スニーカー大賞【特別賞】という栄誉ある賞を獲得した。

 それについては大変嬉しく、今でもウキウキしているものの、現段階では本も出版していないので、実質ただの無職である。


 というか、無職でないと困る。

 こちとら、当面の生活費を失業手当という救済システムによって得ようとしているのだから。


 世の中のライトノベル作家というものは、今や専業ではなく、本業の傍らで執筆を行う兼業作家の方々が多いと聞く。


 SNSを眺めていても、日中は働いている先生がほとんどだ。


 どんな体力をしているんだと思う。


 体組織をマイクロスコープで分析したら、やたらエネルギー効率のいい未知の酵素が発見されるんじゃなかろうか。


 私も本来ならば再就職をして、日銭を稼ぎながら、空いた時間で執筆するという二本刀システムを採用すべきなのだろう。


 ……無理だ。


 生粋のシングルタスクヒューマンである私は、気持ちの切り替えというものが苦手である。

 なんらかの職業に就いている場合、家に帰ったところで業務に頭を悩ませてしまうことは想像に難くない。


 現に、新卒で就職してからおよそ5年間、全くと言っていいほど創作活動に勤しめなかった。読書すらまともにできず、日々脳を腐らせていた。

 

 『僕はライトノベルの主人公』という作品を書き上げることができたのは、度重なる業務とプレッシャーに押しつぶされて心身を壊し、長期休業という余暇を獲得したからである。

 

 ライトノベル作家の世界が、新たな才能が芽吹いては枯れていく弱肉強食のサバンナであるということは理解している。


 それでも私は専業作家という道を目指そうと思う。


 この宣言は、私にとって「面白い作品を書いてベストセラー作家になってやる!」という決意の表明であると共に、「マジでもう二度と労働したくねぇ」という社会への強烈な拒否反応でもある。

 

 今日から始めるこのエッセイは、そんな果てしないロードマップを達成するための第一歩目だ。


 読者を楽しませるため、自分の文章力に磨きをかけるため、新たなるファンの獲得のため、枯れた脳みそ絞り出して日々文章を紡いでいこうと思うので、お付き合いいただけると幸いである。


 コンテンツ生産マシーンになるぞ。

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