暗躍する者たち
魔法使いが人前に出て戦うことは滅多にない。直接的な戦闘を避け、後衛から味方をサポートするのが魔法使いの役割だ。獄蝶のジョカや旭のように、接近戦を得意とする魔法使いは殆どいない。
「バウディアムスのガキ共を殺す。それが今回の任務だ」
闇夜に紛れ、誰にも感ずかれないように標的を殺す。陽の光の当たらない、常に夜であるノーチェスは、魔法使いにとって絶好の狩場だ。
「目標のため、役目を果たせ。『
魔法使いは暗躍する。モニカたちのいる神精樹の古書館を目指し、夜を駆ける。音もなく、気配を感じさせず、2人の魔法使いが古書館の入口に降り立った。
「たかがガキと油断するな、
「あー、はいはい分かってますよ。サクッと済ませちゃいましょう、
顔まで覆っていた黒いローブを脱ぎ、
「……
「黒だし、別にいいでしょ」
「ふざけるな脱げ。邪魔になる」
「は? 口出ししないで」
魔法使いというよりも、暗殺者という方が納得がいく様な格好をした2人が神精樹の古書館の扉に手をかける。この扉を開けた瞬間に、任務が始まる。その瞬間だった。
「かっこいい服だね。それ、どこで買えるんだい?」
「……っ!」
僅かに照らす月明かりが、
まだ気づかれていない。長年の経験からそう感じ取った
「……本を借りにきたんです。研究の参考文献を調べにして」
「ふーん……そっちの子は?」
「あ、あたしは、こいつの付き添いに……」
「へぇ……そっか」
2人をまじまじと見つめ訝しむ魔女が徐々に距離を詰める。2人の背後は扉。唯一の逃げ場の正面は魔女に塞がれている。正体も知らない、一般人かもしれない目の前の女から放たれるただならぬ雰囲気に
(
静止する
「司書ちゃん! 来ちゃダメだ!」
「先にいけ。俺が止める」
「了解。健闘を祈るよ。無事に終わったらご飯でも奢ってくれ」
悲鳴を上げる司書の口を塞ぎ、引きずりながら
―”クリエイト・ウォーター”―
「数分あれば終わる。
月明かりの逆行で、
ピタリと動かなくなった魔女がゆっくりと艶やかな黒髪を束ねると、月明かりで照らされ、激怒した表情が一瞬見えた。そして、
「お前たち、覚悟しろよ」
凡常の魔女が激怒する。凡常の魔女の威圧感で空気を震える。
「この私を怒らせたことを後悔しろ」
「もはや私の人生に後悔はない。ただ、夢さえ叶えることができるのなら」
その戦いは、本当に瞬きの速さで決着がついた。宙に浮かぶいくつもの水の球を操り、多くの武器を構成して魔女に狙いを定める。水の刃が、水の槍が、水の弾丸が、四方を囲んで魔女に襲いかかる。
「”―――”」
魔女が何かを唱えると、
「夢か。もしかすると……いや、考えすぎだな」
凡常の魔女はちゃらんぽらんで、無責任。いい加減な性格をしている。魔女だというのに、頻繁に人前に顔を出して、気さくに挨拶をする凡常の魔女が、すっかり忘れていたこと。
その性格と平凡を演じてきたことから名付けられた「凡常」の名。凡常の魔女の記憶を上書きするように、その名前は名付けられた。凡常の魔女には、もう1つの名前がある。
「ここからは、「凡常」ではいられないかな」
元・大魔法使い、「マーリン・ラクス」。今なお大魔法使いとして数えられる「始まりの大魔法使い」と肩を並べていた天才だ。
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