魔法使い ―4―
星が降る。一筋の流れ星が、奇跡を繋ぐ。
「…………あれ……?」
モニカ・エストレイラが、ゆっくりと目を開く。冷えきっていた身体が一気に熱を取り戻し、その感覚で全身が燃えるような痛みに襲われる。けれど、モニカの顔を一斉に覗き込むもの達の圧で、そんな痛みはどこかへ飛んでいってしまった。
「モニカ!? モニカ!」
「う、うん。そうだよ……?」
「ありえない……こんなことが……」
ヨナ・アージェントが腰を抜かして地面に座り込む。死者が蘇った現実を理解しきれずに、頭が回らずくらくらとしている。
(奇跡だ……あの子は……ほんとに奇跡を)
パーシーがモニカを抱きしめて大粒の涙を流す。それは先程までの悲しみの涙とは違う、歓喜と狂喜の涙だった。
「本当に死んじゃったと思ったんだから!……よかった……」
その姿を見て、モニカの目にも涙が溢れてくる。一体何が起こっているのか検討もつかないような惚けた顔で頬に涙を流している。
しばらく3人が喜びに浸っていると、リズ・アージェントがモニカの母と共に駆け足でやってきた。再び
「呪いが……消えてる」
それだけではなかった。先程まで「0」と表示されていたモニカの
「なんてこと……」
前例など、あるはずがない。魔力の最大値が増える。それも、魔力を持っていない、魔法を使えない状態から。そんなことが有り得るはずがない。しかし、「ありえないことが、ありえない」、それが奇跡なのだ。
皆がそれぞれ喜びで涙を流し、驚きで動けない中、それらとは全くまったく違う感情を持ったものが1人、ゆっくりと、その感情を
「モニカ、お話があります」
その言葉を、聴き逃すことは無かった。できるはずもない。モニカの母が、幽霊や妖とは比べ物にならないほどの威圧感を漂わせている。モニカは思わず背筋を伸ばす。恐る恐る母の顔を見ると、鋭い目がモニカを見つめている。目は合っているのに、それ以上の何かまで見通されている気がした。
「先に帰ります」
そう言うと、意外にもあっさり、スタスタと帰っていってしまった。残されたモニカたちはそれぞれ顔を合わせて立ち上がり、小さな歩幅で帰路に着く。一歩踏み出すと、忘れられていた痛みをモニカは思い出す。パーシーに肩を借りてつつ、痛みに悶えながらゆっくりと歩いていく。ふと、モニカはバレないように辺りをくまなく見渡した。
しかし、どれだけ探せど小狐の姿は、見つからなかった。
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