隣の隣で

一の八

隣の隣

隣の隣で


繁華街での遊びというものに慣れていなかった。


どこに行こうか…


刻々と時間が過ぎる




もう、こんな時間か…

どこに行くあてもないからな

目の前には、ラーメン屋があった。



まぁ、ラーメンでも食べて帰るか…



「どう思いますか?こういうのって限度がありますよね?」


隣の席の男性は、怒っているようだ


隣の席での会話か…



目の前に運ばれてきたラーメンには、湯気立っている


見た目からもその熱さを感じる事が出来る

とても美味しそうな薫りだ





僕の隣ではスーツ姿のおじさんが座っている

先ほど聞こえた会話は、もう一つ向こうの席の方か…


ちょっと、気になるな。



スーツおじさんのその隣


その向こうで会話をしている二人の姿が見えなかった。



 




またもや先ほどの彼が話し始めた。


「僕ね、マッチングアプリやっているですけど

ね…『私、大丈夫ですか?💦』みたいなプロフィールがあったんですよ」


また、その隣の男性が答える


「まぁ、そういうのもあるだろうな」


「やりとりしてる時は、いい感じだったんで実際に会ってみたんですよ」

「あっそうなんだ」


「でもね、女性のぽっちゃりって違うよなって思ったんですよ。実際に会ってみたら全然違うじゃねぇか!って思ってね」


「まぁ、

俺の場合は、女性と話す機会が少ないから

そういうのがよく分からんな…」






なんか、切ない。




正直、隣での会話は、世間ではよくある事だろう


確かに彼の話は、わからなくもないなぁ

彼の意見には、同感だと感じた。


自分にも同じような体験をした事もあったからだ。


分かる、分かるよ

心の中で激しく頷く自分がいた





繁華街という事もあり、夜の世界で輝く人達やそこへ向かう人達がいる


そんな場所だからこそ色んな人がいて、色んな事があると思う

『まだまだ人生は、これからだよ』と彼に一言励ましてあげたいと気持ちに駆られる


だが、知らない人に声かけられるのは、

普通に怖い



“やめておこう”そう自制心を働かせて落ち着かせる事にした



ラーメンを食べ終え、

その店を出よう席を立ち上がった


隣で座っていたスーツ姿のおじさんも同じくらいに立ち上がる




気になっていたので、

先ほど二人を見ると、

文句を並べていた男は、ぽっちゃりだった。




いや、お前が言うなや。


「ご馳走様でした」

余計な事を言うのはやめよう


きっと、その相手の女の子も同じ事を思っていたのだろうから



静かに店をあとにした

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隣の隣で 一の八 @hanbag

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