テスラカフェへようこそ!

マスク3枚重ね

第1話 モーニングへようこそ!

ここはテスカバロル帝国の首都にある1軒の喫茶店、週に1度しか開かないその店は今日も人で賑わっている。中は香ばしいマフィンの香りとコーヒーの香りが鼻を抜け、座り心地の良いソファがあなたを迎える「テスラカフェ」です。

「今日も盛況だね!」そう言ってカウンターの席にノシりと座ったのは漁師のカジさんだ。彼は大きい身体で豪快に言う。

「おや、カジさん来てくれたんですね」店主のテスラがブレンドコーヒーをドリップしながら愛想良く言う。

「いつもので?」

「あぁ!いつもので頼む!それと朝食に何かもらえんか!?」カジさんは豪快に指を上げ注文する。

「でしたらクロックムッシュなどどうでしょうか?コーヒーとよく合いますよ?」テスラが入ったばかりのコーヒーを先にお出しする。コーヒーからは湯気が立ちいい匂いが鼻を抜ける。

「そいつはいいな!是非もらおう!」カジが白いカップを持つとカップはすごく小さく見える。中のコーヒーを一気に流し込む。

「っかぁぁ!美味い!やっぱここのコーヒーは最高だな!毎日飲めねぇのが残念だぜ!」カジが顔を顰めコーヒーの苦味を噛み締めながらに言う。

「申し訳ありません。毎日開けたいのはやまやまなのですが、コーヒー豆が週一回分しか降ろして貰えませんので」テスラが深々と頭を下げる。

「何だい?外国からの輸入品なら俺のダチに頼みゃいくらでも降ろせると思うぜ?今度聞いてみっか?」カジがカップを下げながら言う。

「お気ずかい感謝致します。しかし、輸入経路が少々特殊でして、そういうの訳にも行かないのです」テスラが空いたカップにコーヒーを注ぐ。

「おお、あんがとな!そうかい、残念だが今は週一で我慢するしかねぇな!ガハハハハ!」カジが豪快にまた笑う。

「クロックムッシュ上がったよ!」奥から1人の女性が顔を出す。彼女はケイティー、キッチンを担当してくれている。

「おう!ケイちゃん!今度一緒にデートしようぜ!」カジが豪快に手を振り言う。

「あんたとデートなんかするか!そのでかい身体絞って出直しな!」そう言うとケイティーがキッチンに引っ込む。

「ガハハハハ!また盛大に振られちまったぜ!」カジがまた豪快に笑う。

「申し訳ありません。ケイティーは少々口が悪くて」テスラが申し訳なさそうに謝る。

「構わねーさ!女はあれくらいじゃなきゃいけねぇ!」カジがコーヒーをズズズとすする。その前にクロックムッシュをお出しすると「おお!」と言い食べ始める。

「こりゃぁ美味い!チーズが伸びるな!それにベーコンが肉厚でうめぇ!」口の中に広がる濃厚なチーズと香辛料の効いたピリッとしたベーコンの香りが口の中いっぱいに広がる。これをコーヒーで流し込んだら鼻から抜けるコーヒーの香りで心は満たされる。

「実は昨日良いチーズが入りまして、モッツァレラ、ゴーダ、パルメザンの3種からなるチーズを合わせ、ベーコンは香辛料を擦り込み数日寝かした物を使用しております」テスラが説明する。

「チーズを贅沢に3種類も使うのか!この濃厚なチーズがたまらん!」カジが伸びるチーズをハフハフしながら食べる。

「気に入って貰えたなら幸いです」テスラが手を胸に当て軽くお辞儀をする。



「いやぁ!美味かった!腹いっぱいだ!3つも食っちまったぜ!」カジがまたガハハハハと豪快に笑う。

「そういや聞いたか?また海賊が出たんだとよ?」カジが髭に着いたチーズをナフキンで面倒くさそうに取る。

「海賊ですか…物騒ですね」テスラがカップを拭き棚に戻す。

「そうなんだ!俺たち漁師や輸送船が襲われ、獲物や金品を巻き上げられちまってんだ!お陰で船の数が減り、市場に並ぶ魚や食いもんは軒並み高騰しちまってるだろ?これじゃ俺達も商売あがったりだぜ」カジは大きな肩を大袈裟に下げる。

「それは困りましたね…海賊に心当たりはありませんか?」テスラは手を拭きながら聞く。

「心当たりって程ではねぇーが何でも貴族が絡んでるらしーぜ?物価高騰させてぇ貴族が自作自演してるって噂だ!」丸めたナフキンを転がす。

「ほう…それは貴族としての品位にかける行為ですね…」テスラの青い瞳が光る。

「俺達平民は貴族に立て付けばしょっぴかれるか、下手したら処刑にされちまう!だから自警団の連中も見て見ぬふりだ!クソが!!」カジがカウンターをドン!と叩く。

「お気持ち御察しします。さあコーヒーをどうぞ。こちらはサービスしときますよ」テスラが空いたカップにコーヒーを注ぐ。

「おう、悪ぃな。カウンター叩いちまって」大きい身体が少し縮こまったように見えた。

「良いです。このままでは生活に支障が出かねない。カジさんにとっても一大事ですから」テスラが新しくコーヒーを入れる。

「そうだな…あの辺がダメになると大変だが別の場所に出てみるのもありかもな。もし、漁師が廃業したらここで雇ってくれよ!」カジが冗談ぽく笑う。

「良いですよ。ただ、週に1回しか仕事はありませんけど」テスラが冗談とも本気ともわからない顔で返す。

「ガハハハハ!そいつはいいや!んじゃそん時は頼む!お代ここ置いておくぜ!」カジが大きな身体を揺らし後ろ手を振り豪快に出ていく。

「またのお越しをお待ちしております」テスラが頭を下げ見送ると奥からケイティーが出てくる。

「どうなさいますか?」

「裏は取れている。ヴィラン伯爵を直ぐに吊るす。海賊家業もここまでだ」そう言って店主テスラは青い瞳を隠すようにメガネをあげる。




「よう!店主!」そう言って入ってきたカジは先週より元気そうだった。

「いつもので頼む!それと海賊共が捕まったぞ!裏で物価を高騰させ利益を得ていたのがヴィラン伯爵だったとはな!」額を手の平で叩きながらガハハと笑う。

「その様ですね」テスラはニコリと爽やかに笑い。いつものコーヒーを出す。それを受け取りズズズと飲み干し、直ぐにコーヒーを注ぐ。

「いやぁ良かった!これでまたいつもの漁場に戻れるぜ!」

「おや?私の店で働いていただけるのかと思い制服を用意したのですが、いらなかったようですね」テスラは肩を落とす。

「おいおいマジか!そいつは悪ぃ事したな!買い取るぜ?」カジが大きな身体に似合わない顔をする。

「冗談ですよ。あなたの制服を1週間やそこらで準備出来ませんよ」テスラがふふふと笑う。

「おい!冗談かよ!こいつは1本取られたな。ガハハハハ!」カジが豪快に笑うと奥からケイティーが顔を出し叫ぶ。

「うるさいぞ!筋肉ダルマがっ!他の客に迷惑だろうが!!」

「ケイティーあなたもですよ?」テスラが人差し指を唇に当て片目を瞑る。

「すいません…」ケイティーが深々と頭を下げる。

「ケイちゃん!今度デートしよう!海の上で一緒に朝日を見よう!」カジが大きな声でケイティーを口説く。

「だから、お前の声はうるさいんだ!脳筋ゴリラが!!」ケイティーの声が店内に木霊する。

「やれやれ…」店主テスラは今日も騒がしいテスラカフェで働く。

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