第2話 「惴惴たる小心、谷に臨むが如し」負け際の素晴らしさ

勝って驕らず、の岡崎さん。

一方、負けて悔しがったり落胆しない谷さん。

(こういうことは考えてはいけないのですが)谷さんは、2回相手を足払いで倒し、もし1回目も押さえ面突きを取っていれば、・・・。

それなのに、残念がる・悔しがる素振り(心)が微塵も見られない。

「善く敗るる者は乱れず」。

両者とも、絶対に勝つ、という意気込みであるにせよ、勝ち負けという目に見える結果に拘泥せず「コギト・エルゴ・スム」、どこまで自分が自分になり切れるかという、真理を追求するスピリット(魂)が、そこにはありました。

「道を求めて止まざるは水なり」(の境地)とは斯くの如し。

勝者たる者の立派な姿と「善く敗るる者」の心とを、お二人は鮮やかに見せてくださいました。

 「善く勝つ者は争わず、善く陣する者は戦わず、善く戦う者は敗れず、善く敗るる者は乱れず。夫れ、棋は、始めは正を以て合し、終わりは奇を以て勝つ。凡そ敵、事無くして自ら補う者は侵絶の意有り。小を棄てて救わざる者は大を謀るの心有り。手に随って下す者は無謀の人なり。思わずして応ずる者は敗けを取るの道なり。

詩経に云う『惴惴たる小心、谷に臨むが如し』とは此の謂なり」

「西遊記(一)」小野忍訳 岩波文庫



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る