冒頭のみ

愛と狂気と欲望のファンタジー~異世界転生ラブコメには危険がいっぱい~

第一話 転生できません!

「……と、いうわけで。あなたは転生できません」


「………………は?」


 私の話、聞いてました? ……と、笑顔で首を傾げる女神。たぶん女神。目が笑っていないけど。


「あなたは、死んだの。おわかり?

 ドゥーユーアンダースタ~ン?」


「いや、それはさっき聞いたけど……ってか、なんで英語?」


(というより、俺は、なんで死んだんだ?)


 思い出せない。


「死んだのですから、記憶も不要ですよね」


 女神は、まるで俺の心の声が聞こえたかのように答えた。さすが女神ということか。


「俺は一体どうなるんだ?」


「終わりです」


「終わり?」


「はい。ですから、先ほども言いましたように、あなたは現世で何のも残しませんでしたので、通常であれば転生して新たな人生を送る筈が、あなたには、その資格がない、ということになります。だから、終わり。人生、これでお終いです」


 ぱちん、と女神が笑顔で手を叩く。

 俺は、〝終わり〟という非情な言葉に焦りを感じた。死んだことを覚えていないので納得はできていないが、できれば転生して新たな人生を送りたい。


「いや、ちょっと待てよ。功績って何だ?

 電気を発明したり、不治の病を治す薬を作ったり、大統領になることか?

 そんなこと言ったら、世界から凡人が消えるじゃないか」


「う~ん……人間の言葉というものは、全く面倒ですねぇ~。

 まぁ、そういうものも功績と言えるのでしょうけれど、私たち神々にとっては、そんなことはどうでもいいんです」


「え?」


「考えてもみてください。電気がなかろうが、不治の病が流行ろうが、神は困りません。だって、神ですから。困るのは、人間だけですよね?」


「そりゃ、そうだ……じゃあ、一体、〝功績〟って何のことなんだ?」


「ごほん。私が言った〝功績〟というのは、転生するための新たな器をつくることです」


「新たな器? それって……子供をつくったかどうかってことか?」


「ご明答! 魂が転生するには、新たな器――つまり、新しい命の誕生が必要になるんです。器がないと、魂はどこにも行けず、彷徨ってしまいます。そうすると、天界は魂でいっぱいになってしまいますから、どこにもいけない魂には、そのまま消滅してもらうことに決まっているんです」


「決まってるって言われても……いやでも、人によっては、たくさん子供がいる家庭もあるだろう。そういうのは、どうなるんだよ?」


「……気付いてしまいましたか。まぁ、全員が全員そうなるわけじゃないんですよね。たまたま新しい器があって、転生できる人も中にはいます。昨今は、不妊に悩んでいる方も多くいますが……それは、逆に転生するための魂の用意が出来ていないというだけで……」


「そんなことは、どうでもいいよ。とにかく、俺は、転生できるのか? できないのか?」


 話を遮られたのに、女神は、気を悪くするどころか、憐れむような目を俺に向けてきた。


「残念ながら……転生するためには、優先順位というものがあるのです。

 まず第一に、新たな器を作ったかどうか。一つでも器をつくっていれば、転生できることが確証されます。

 第二に、新たな器を作るための努力をしていたかどうか。これは、魂の不足というケースが起こりうるために、不妊となってしまった方々を救済するための措置として設けられました。でも、あなたの場合は……そのどちらにも該当しません」


「え……それって、つまり……俺は、童貞のまま死んだから、転生できないって言うことか?」


「ピンポンピンぽ~ん♪ 大正解で~す♪

 あなたは、前にここへ来た人よりは少~しばかり頭が回るようですね。私も説明の手間が省けて助かります」


 拍手をして喜ぶ女神を見て、俺は、思わずかっとなった。


「ふっ……ふざけんじゃねぇよ!

 誰が好き好んで童貞のまま死んだと思ってんだっ!

 ……って、全然覚えてねぇけど…………俺、本当に童貞のまま死んだの?」


「ご愁傷様です」


「まぢか…………」


「というわけで、最初に戻るのですが、あなたの魂には、ここで消えて頂きます」


「ま、待て! そんなことを言ったら、俺以外にも童貞のまま死んだやつだってたくさんいるだろう! そいつらも皆、転生できないって言うのか?

 そんなことになったら……あっ」


「そうなんですよ~困ったことにですね、最近は、晩婚や〝お独り様〟という言葉が流行っている所為か、少子化にも拍車がかかっておりまして、転生できずに消滅してしまう魂が多くて……私たちも困っているんですよぉ~」


 はぁ、と女神がため息をつく。


「そんな…………あっ! でも、誰かの命を救って死んだら、異世界に転生できるって、何かで聞いたことがあるぞ」


「あ~……まぁ、それはですねぇ~……他の魂の器が死ぬところを助けた、ということで特例としてですね、一部の神々の間で流行っているみたいなんですよねぇ~……一種のゲームみたいなものでしょうか。まあ、私は、流行りが嫌いですので安心してください」


「安心しねぇよ! ふざけんな!

 俺も今すぐ異世界に転生させろやっ!」


「お口が悪い坊やですねぇ~……あんまり私を怒らせると、魂の消滅よりも恐ろしい処へ送ってしまいますよぉ~?」


 女神の顔が鬼の形相に変わるのを見て、俺は、態度を改めた。


「すみませんっ! 反省してます!」


「よろしい。まぁ、あなたの場合、誰かの命を救って死んだわけではないですから、その特例すら該当しないんですけどね」


「え……じゃあ、俺は、一体どうやって死んだん……ですか?」


「え~聞きます? 本当に聞きたいですか?」


「そりゃ、もちろん聞きた…………くありません。やっぱいいです。ごめんなさい」


 俺は、なんとなく聞くのが恐くなってやめた。

 どうせ記憶がないのだ。聞いたところで意味はないだろう。


「それでは、すっぱり諦めて、消えていただけますか?」


「そうですね…………って、そんなすっぱり出来るか!

 何とかならないんですか? 俺にだって、まだやり残したこともたくさんあった……筈なんです。……覚えてないけど」


「う~ん、それは、つまり、〝更生〟をお望みということでしょうか?」


「更生? それって、俺の知ってる意味の〝更生〟ですか?

 やり直す、とかそういう意味の?」


「まぁ、大体そんなところですかね」


「やりますやります。何でもやります。更生するので助けてください」


「分かりました。では、少々荒療治となりますが、あなたには、転生できる新たな器が見つかるまで、〝更生〟して頂きます」


「……ん? 今、荒療治って言った?」


「ええ。ですから、この私が自ら手掛けた傑作『愛と狂気と欲望のファンタジー』という小説フィクションの世界へ転生し、様々な愛についてお勉強して頂きます!」


「え、ちょっと待って。私が手掛けた?

 フィクションって言った?

 『愛と狂気と……』なんだって??」


「これも全ては、新たな器をつくり、魂の輪廻転生を本来の正しき形へ戻すため。

 それでは、素晴らしき異世界フィクション転生で〝更生〟して来てください」


「ちょっ、待ってくれ! まだ聞きたいことが……!」


 ――――――――暗転。


 そして、俺の意識は途絶えた。



 *♡*♦*♡*♦*♡*



 ♦キャッチコピー♦

 『公爵令嬢エロイーズは、絶世の美女だが、前世男で、ショタコンである。』


 ♦紹介文♦

(か、かわいすぎるっ……!!!)


 公爵令嬢エロイーズは、鼻血が出るのを手で抑えて、悶絶した。

 目の前には、あどけない表情で自分を見上げる少年ナルキス王子がいる。

 今の性別上は、女である自分が男を好きになっても、何の問題もない。

 だが!


「俺は、(元)男なんだあああ~~~~!!!!」



 この物語には、主人公が二人いる。


 異世界の公爵令嬢エロイーズに転生した、元男。

 異世界の王子ナルキスに転生した、元女。


 童貞or処女のままこの世を去った者は、現世に転生することが出来ず、

 フィクションの世界へと転生されるのだ。……それも、性別が逆!


 二人は、互いが転生者であることを知らないまま知り合い、惹かれ合う。

 しかし、前世での性別が二人の恋の邪魔をする。


(いやいやいやいや、俺、男だよ? まあ、身体は女だけどもね?

 女が男を好きになるって、普通じゃん。

 …………いやいやいや。やっぱ、俺が男を好きになるとか、有り得ないから!

 ああっ、俺は、どうしたらいいんだぁあああ~~~!!)



 主人公が転生した異世界は、女神様が創った『愛と狂気と欲望のファンタジー』という官能ファンタジー小説の世界!

 百合やらBLやら禁断の愛のために皆が己の命を懸けて戦い、奪い合う戦場でもあった!

 二人のラブコメは、今始まったばかり。

 さあ、二人の愛の行方は―――?!



 *♡*♦*♡*♦*♡*



 ……という設定で、異世界転生ファンタジーを考えておりました(笑)。

 いわゆる異世界転生のテンプレを元に、自分なりのアレンジを加えて、めくるめく人間ドラマに愛憎劇をふんだんに取り入れた大人向けのラノベになる……予定です💦

 もちろん、セルフレイティングありで!!


 ……こんなの読みたい人いるのかな?( ºωº )チーン…

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